第7話 お前使い道ないぞ?
『ヒャッハァァ!俺様復活!』
黒い靄が晴れて、黒錆びの棒が黒く綺麗な棒へと変貌した。
「オイ世紀末野郎。さっきと違って鮮明に脳内に聞こえるのはお前の声か?」
『俺様の声にソウルが震えるってか?持ち主のお前にだけは脳内に話掛けてられるぜ!』
如何にも物語序盤に出てくる三下みたいな喋り方だな!
「そ、そうか...俺はカガミ、頭の上のがスフィだ。でお前は本当に武器なのか?」
『ノォォォウ!俺様はそこいらの魔剣、聖剣みたいなチャチなモンじゃないぜ!識格武器にして、常に進化し続けるアルティメイトウェポン様だぜ!』
あろう事かこのヒャッハーな黒棒は自分の事を聖剣や魔剣と同列以上に語り始めた。
コイツ本当に大丈夫か?もう既にクーリングオフしたくなってきたんだが!
「そうかよ。じゃお前の名前は...アルテマでいっか。」
『オイ、カガ坊!途中で考えるの面倒くさくなっただろう!?』
「ソンナコトナイヨ」
『テメェ、もっと上手く誤魔化せねのかよ!』
名前:アルテマ Lv3
種族:暗黒識格武器
スキル
暗黒強化/暗黒接続/武器食い/武器変化/自動補助/自動修復/成長
ファッ!?どうせ大した事無いと思って試しに自称究極武器に簡易鑑定を掛けたが、自分の事を尊大に語るだけの事をあるな。なんかちょっと悔しいぜ。
能力値が無いのは武器判定だからで、【暗黒強化】が俺の暗黒面のLv依存だからか。
特に武器を食い、食った武器の形になるって言うのはもはや戦闘職からしたら喉から手が出る程のチート武器だ。しかも成長のオマケ付きだ。
「お前、ただの黒い棒のクセにスペック高いな」
『棒扱いするんじゃねぇ!武器の一つや二つ食えばイカしたハンサムな武器に早変わりだ!って事で武器くれ』
「......俺はテイマーだ。お前のスペックを発揮できるステータスビルドじゃない。悪いが諦めろ。」
『っは!ハァァァァァァ!?俺様はイカした直剣やクレイジーな大剣、クールな刀になれないのか!?』
コイツは何で剣縛りなの?アホなの?戦闘狂なの?まぁ口調からして戦闘狂なのは確定だろ。
「仕方ないだろ。テイマーなんだから戦闘スタイル的に俺は弱いんだよ。戦闘は全部従魔に任せる予定だ。」
そう、問題はアルテマがどんだけ高スペックで成長率抜群でも、剣術等の戦闘系スキルを持たない俺じゃ宝の持ち腐れなんだ。
『カガ坊、オメェ弱い事で良くそんなに堂々と嘯けるな!...てかよぉ本当に武器は使わない予定なのか...』
言葉から分かる様に元気が段々と無くなりつつあるアルテマに今までの事を説明した。
暗黒面の事とかな。
『あ、暗黒面!?カガ坊があの暗黒面の走狗の闇人なのか?通りで悪人面だと思ったぜ!』
「お前、暗黒面について何か知ってんのか?それと悪人面は余計だ!」
よくよく考えたら俺は暗黒面についてあんまり知らないんだよな~
まぁ、俺は別として暗黒面の力を使う奴は犯罪者ばっかりだろうな。
『よくは知らないが、俺様の大昔の持ち主が暗黒面のヤツに嵌められてバチクソに殺られたぜ!』
カルコス然り、昔から暗黒面に連なるヤツは姑息な戦い方をするようだ。
「成程。闇人らしいやり方だな...取り敢えず当分の間はアルテマの使い道は無さそうだな。」
「ピュイ(マスター杖ならタブン暗黒面ノ力二役タツ)」
スフィが何やらアルテマに助け船を出し始めた。
『それだ!スラ公の言う通りだぜ!なぁカガ坊、お願いだ頼むよ~』
杖って武器なのか?魔法の補助具のイメージしか無いんだよな。
それと何故に杖が暗黒面に役立つか不明だが、ここはスフィの言葉を信じてみるか。
「ハァ...分かったよ、適当な杖を買っておくよ。てかお前達は何で会話お互い出来るんだ?」
聞いてみると、どうやら暗黒接続で俺に接続する事でスフィとアルテマはお互いに会話する事ができるらしい。
『なぁな!杖買に行こうぜ!杖!』
色々とアルテマの事も分かり、急かされるがままに初心者用の杖を買に町にでる。
◆
「お買い上げありがとうございました!」
NPCショップで【初心者の杖】と【初心者の小盾】を合計2000Gで買い、人目のない所でアルテマに与えた。
盾も買った理由は最悪前衛を突破された時ようの為だ。要は最後の悪あがきだ。
『美味しく頂くぜぇぇ!ヒャッハァァ!』
「ピュイ!(おースゴーイ!)」
アルテマから口を模したモノが二つの武器を飲み込む。
てか、コイツは一々ヒャッハーしないと食事出来ないのか!?うん、コイツと一緒に飯を食べるのはやめよう。
「アルテマ。杖に変化してみてくれ」
『ヒャッハァァ!行くぜウェポンチェェェンジ!』
ただの黒い棒だったアルテマが先端に黒真珠を携える禍々しくも麗しい杖へと変貌した。
「お前、ヒャッハーなクセに見た目は良いんだな....」
ちなみに小盾の方に変化して貰ったが、こっちは棘々しい感じだった。
『おぉ、カガ坊!やっと俺様の魅力に気づいたな!』
今後はコイツの事を褒めるのは程々にしとこ。褒める度に脳内でヒャッハーって喚かれるのも鬱陶しいしな。
「よし、スフィ、アルテマ。俺の力とお前たちの力を試しに一狩いくぞ。」
二匹?の元気の良い「おう!」って返事を聞き、再びスフィと戦った森へ移動する。
「スフィ、俺を援護しろ!暗黒面の力を再度実験する。」
「ピュイ!(了解マスター!)」
「ガルゥルゥ、ガルッ!」
森を歩くこと数分、ハイエナみたいな魔獣とエンカウントした。
「怒り、憎しみ....カルコスッ!」
スフィと戦った時に分かった事がある。負の感情がトリガーとなって暗黒面の力を使う事が出来る。
俺の場合はカルコスの事を思い出すのが手っ取り早く暗黒面の力を引き出す事が出来る。
「ガル!」
「チッ、追いつかないか。」
黒い靄が中々ハイエナに追いつかない。全て飛びながら躱されている。
暗黒面のLvが低いのが原因なのか、負の感情が足りないのか、まだまだ検証が必要だな。
「ガル!」
靄を振り切り、俺に飛び掛かってくるハイエナ魔獣、だがコイツは見落としをしている。
「フン、アホめ。俺に構い過ぎたな!」
「ガ!?」
空中でスフィの触手に捕まり、地面に叩きつけられるアホハイエナ。もっと視野を広く持つべきだったな。
「よくやったなスフィ。今日のMVPはお前だ。」
「ピュイ!(ワーイマスターに褒めラレタ!)」
スフィは褒めて伸ばす方向で良さそうだな。アルテマの事を考えると今後も個性的なモンスターが仲間になる可能性が高い。
メンドクサイけど後で組織運営とか部下の伸ばし方について勉強しとくか。
「ガル...ガ...!」
「テメェの事は忘れてねぇよ。よくも手間かけさせてくたな。」
触手で拘束されてるハイエナを靄で包み、締めてトドメをさす。
「やっぱり....圧殺しか出来ないか」
今の戦いを振り返ると、現状の暗黒面で出来る事が少ないと知った。
敵を捕獲して圧殺は出来るが、捕獲はスフィと役割が被るし、素早く動く敵には簡単に避けられる。
『次は俺様の番な!』
腰に差していたアルテマは杖へと変化する。
正直言うと杖が暗黒面の力にどう言う風に役に立つかは甚だ疑問だ。
もしこれでアルテマが何の役にも立たなかったら、ただのお調子者枠だ。
「ギィィ!」
「次はバッタか。いくぞアルテマ!スフィは引き続きサポートを頼む。」
探索再開間もなく、昆虫系の魔物に遭遇したので杖を敵に向ける。
『ヒャッハァァ!俺様の輝きを見せてやるぜぇぇぇ!』
「ピュイ!(エムブイピー取る!)」
アルテマに輝きがあるかは疑問だ。スフィは....意味を知らないで言ってる可能性が高いな。
「ギィ!?」
「なっ!?これは凄いな....」
今まで俺を起点に発生してた靄が、敵を起点に発生し、バッタを捕らえ圧殺。
これが杖の力なのか?
アルテマに聞いたら【自動補助】のお陰らしい。まさか、これからはアルテマさんって呼んだ方がいいのか?
いや、やっぱり癪だからやめとこ。
『ヒャッハァァ!これが俺様のパワァァァだ!』
何故かコイツにだけはMVPとか言いたくねぇ!
『......』
なんか手に持ってる杖からの圧が凄いんですけど!これ褒めないと絶対に拗ねるパターンじゃん!
「お、俺はお前が出来る奴って信じてたぞアルテマ!」
「ピュイ!(アルテマの変化ハ便利!)」
『カガ坊、スラ公、やっとお前らも俺様の輝きが見えたんだな!』
取り敢えず、コイツは絶対に輝きとかパワーとかカッコイイ言葉を使いたいだけのイタイ奴ってのは分かったわ。
「ピュ...(アルテマチョロイ...)」
チョロテマさんはさて置き、それからはひたすらに色々な連携パターンを試しながら時間を忘れ、魔物を狩っていた。
《基礎Lvが4になりました。》
《暗黒面Lvが5になりました。》
《職業・テイマーLvが4になりました。》
ログを確認したらLvが色々と上がっていた。テイムモンスターに戦わせるだけでもテイマーLvって上がるんだな。
まぁニートは一切職業Lv上がってないけどな!やっぱりこんな働き者の俺がニートとか間違ってんだよ!
ピッピピピピピ
《手持ちの卵の孵化まで1分前になりました。》
そう言えばもう72時間経ってたのか。
急いでインベントリから【真夜の卵】を取出し、孵化までの気持ちの準備を整える。
ソワソワして落ち着かない。これが父親の気持ちか!
「ピュイ!(新しイ友達!)」
『っておい、カガ坊!これ真夜を支配した魔物の卵じゃねぇか、冗談にも程があるぜ!』
どうやらアルテマは過去にこの卵の魔物に対して見聞があるらしく、聞いたら『べらぼうにヤベェェぜ!』しか言わない。
コイツに聞いた俺がバカだったよ!
アルテマとスフィとソワソワしてると卵に段々とヒビが出来ていき...
「うっ!?眩しい!」
「ピ、ピュ!?(こ、これガ輝き!?)」
そうだスフィ。アルテマの自己満足な輝きと違って、こっちは生命の尊い輝きだ。
『目、目がぁぁぁぁぁぁ!』
お前に目なんて付いてないだろ!てか、なんでお前がそのネタ知ってんだよ!?
心の中で色々ツッコミを入れてると光が収まり、そこにいたのは...
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