第6話 はっ!?武器なのかよ!
「よし、終わったぞ!」
ESO内の宿屋にて学校からメールで送られてきたテスト範囲の勉強を終わらせた。
ゲーム内で勉強?なんて思うかもしれないが、ゲーム内での一日は現実換算でたったの6時間。
少しでも賢い奴なら、これを有効活用するのは当たり前だ。
「ピュイ(マスター暇ダヨーン)」
俺の頭の上でつまんなそうに訴えかけてくるスフィ。
まぁ、ずっと他人の勉強してる所を眺めてたら流石に飽きるか。
「ひと稼ぎに行くか。」
向かう先は始まりの町の市場。
スフィとの戦闘を終えてからポーション等の準備で意外と出金が激しく、金策をしなきゃいけなくなったのだ。
スキル【目利き・骨董品】を使って転売をするつもりだ。
「これは買って。で、これは...ゴミだな。」
市場に着いてからは元手の4000Gを6000Gに伸ばせたが、それ以降は苦戦中だ。
だが、ここでチャレンジしなきゃ目利きLvは上がらないので、投資だと思って頑張る事にする。
「このマークが入ってる品は結構高く転がせられるな。ブランドロゴか?」
転売していく中で一つの法則を見つけた。
アルファベットのAを逆さまにして、その上にXをくっ付けたロゴが入ってる品は1.5倍程で転売出来るのだ。
現実と同じでこの世界にもブランドの概念が存在するって事だろう。
法則を見つけてからはブランドロゴが入ってる物を買っては売るを繰り返し、残高を3万Gに持っていく事に成功した。
「ピュイ...(オナカ空いたヨマスター......)」
「あぁ、もうそんな時間か。屋台でなんか買って食うか」
《言語理解・魔物Lv5になりました。》
そう言えば昨日もLvが上がったな。
一々スキルのLvUP通知が来るのも嫌なので、基礎Lv、職業Lv、暗黒面Lv以外の通知をOFFにする。
「オジサン。串焼き4つ下さい。」
「はいよ坊主。四つで600Gだ」
屋台の店主に600Gを払い終わり、少し歩いた先の広場にある椅子に座る。
ちなみに味については可もなく不可もなくって感じだ。
プレイヤーの店だともう少しマシなのか?まぁ始まりの町だしな。
俺も料理スキル取っておくべきか迷う。
正直に言うとリアルでの俺はカップ麵か炒飯しか作れ無いのだ。
そう言う理由もあり、ゲームの中で料理をする気になれない。
「あ、あの......」
大体、今やるべき事は戦力の確保と暗黒面のLvを上げる事だ。
料理まで手を出してる場合じゃない。
「えと、聞こえてます?」
このゲームのキャッチコピー『あなただけの物語を』から推察すると、カルコスを殺すストーリーも構築可能な筈だ。
チッ、あの理不尽な電撃を思い出すでけで腸が煮えくり返る思いだ。
あの老害は絶対にいつか俺が殺してやる!
「ねぇってば!」
「さっきからウッセェんだよぉ!ぶっ殺すぞ!」
「ヒィッ...!」
目の前で地に尻を着き怯えるショートブロンドの女性。
コイツはさっきから何だ?丁重に無視してんだからマジで失せろよ。
暗黒面の力で絞め殺してやりたいが、このゲームでは基本PK不可だからもどかしい。
「ピュイ、ピュ!(マスター黒いノ漏れテルヨ!)」
「フゥーハァー...悪いなスフィ。感情が高ぶってた。で、そこの女は俺に何の用だ?」
息を整え、感情を平静に保つ。
どうやら暗黒面の力が溢れてたようだ。
今後は気を付けないとな。
「今の黒いの...」
「要件だけ言え。あと、興味も無いから名乗らなくていいぞ。」
「あなたいつかGM案件になるわよ....私は情報クラン所属のスザンナ。そのスライムちゃんについて聞いてもいいかな?」
情報屋でスフィの情報目当てか。スフィはそもそも自然発生するか怪しい種族だ。
スフィの情報を売るとなると、暗黒面の情報も渡さなきゃイケなくる。
断固として拒否させて貰お。
「情報屋か。悪いが俺はソロで眷属以外は信用しない閉鎖主義だ。分かったら失せろ。」
「取り付く島もなさそうね。始まりの町を拠点にしてるからスライムちゃんの情報で儲けたくなったらいつでも声かけてね!」
それだけ言うとスザ何とかは去って行った。
どうやらこのゲームでも情報と言う無形商材で稼ぐ事は可能らしい。
願わくば二度と会わない事を祈ろう。
「ピュイピュ(マスター口悪いヨー)」
「スフィ。俺なりの優しさだ。キチンと自分のプレイスタイルを表明しないと勘違いする馬鹿が多いからな。」
「ピュイ!(デモマスタースフィニ優しイカラ好き!)」
「なぁスフィ。好きって言うが、俺ってお前の事を絞め殺そうとしてたんだぞ?」
「ピュピュイ、ピュ!(弱肉強食ハ魔物のシンリ、ソレニマスターは力ヲクレタ!)」
「案外サッパリしてんだな魔物って。まぁ人間より好感を持てるがな」
「ピュイ..ピュ?(マスターも...ヤミビトハ人間?)」
「あぁ確かに、闇人が人間かは俺も分からん。まぁ人間に近しい種族だろうけどな。」
闇人の特徴は金眼、悪人相。パット見じゃ人間との違いは判断出来ない。。
強いて言えば瞳の色で分かるかも知れないが、キャラクターメイクで金色に出来るからほぼ判断不能だ。
広場を後にして、俺達は再度市場を物色する。
―終わりか
「ピュイ!(マスター!)」
「スフィ分かってる。この感情は悲しみに近い何かだ。うん?気配が弱くなっていく..」
「ピュ(一瞬だけどアノ建物カラ感じタヨ)」
闇人?暗黒面?の特性か知らないが俺は負の感情を大まかなに感じる事が出来るらしい。
スフィは【
スフィが触手で指す方向に目を向けると古そうな建物があり、中に入る事にする。
とりあえず暗黒面絡みじゃ無い事を祈る。
「失礼まーす」
「あら、お客さん?珍しいわね。アルベルアンティーク店へいらっしゃいませ!」
出迎えたくれたの妙齢の女性。年代物の壺に皿、良く分からない置物。
見た所本当にただの骨董屋って感じだ。
「えーと、アルベルさん?さっき悲しい事とかありました?」
「悲しい事?うーん昨日ウチの店のアンティーク品が急に崩れて粉になった以外は特にないかな~、なんかあったの?」
それは確かに悲しいな。
「いや、無いなら大丈夫です。店のモノを見ても大丈夫ですか?」
「うん。ごゆっくりどうぞ!」
ゆっくり見る事にする。しかし、かなり閑静な店だ。
あんまり客足が良くないのかもしれないな。
店の物を色々物色したが、特に負の感情に繋がるモノが無い。
気のせいだったのか?いや、スフィも感じたんだし、そんな筈は無い。
―このまま、終わりたくない
「うん?誰だ?」
「どうしたの?」
―俺は何の為に生まれた
―いつになったら俺は
―幾年の時を抗えばいい
違う、これは俺の脳内に流れてくる負の思念だ。何処からだ?
俺は辺りを見渡し、負の思念を濃く感じる所へと進む。
「これ何だ?黒い棒?置物?」
「ピュ!(悲しミを感じルヨ!)」
とりあえず簡易鑑定を掛ける。
【黒く錆びれた置物:オブジェクト】
考えても埒が明かないので謎の置物を3000Gで買って骨董屋を後にて宿屋を目指す。
「またアルベルアンティーク店をよろしくね~」
笑顔で見送ってくれるアルベルさん。
ただ一つ言いたい、効果も何も無い錆びれた置物が3000Gとか高すぎだろ!
宿屋の個室に着き、暗黒面の特性を試みる。
試すのは相手の負の感情に語りかける事が出来るかどうか。
―オイ黒錆び。お前は何モノだ。
―お前は誰だ。何故会話が出来る。
置物とのコミュニケーションは問題なく成功したようだ。
―質問に答えろ。じゃないとお前はゴミ箱行きだぞ。
―それは御免だ。俺様は武器だ。刃であり盾だ。
自分を武器だと言い張る置物。コイツはまさか痛いヤツなのか?
―お前が武器かどうかは置いといて、何故悲しみに暮れている?
―もう限界なんだ。力が尽きる。黒錆びの呪いを押し返せるだけの力があれば...
ー力か、ハッハハハ、欲しいか?力が?己を取り戻せるだけの力がぁ!
ー何を...
ーお前に力をくれてヤルって言ってんだよ。黒錆び。
ーお前は...俺様に何を望んで...
ー取引だ。お前に力をくれてやる。その代わりに俺の刃となり盾となれ!
ーそれが本当なら...欲しい...力が欲しい...!
置物の消え入りそう願いを聞き届けたので、望みを叶えてやる事にする。
これも何かの縁だ。コイツがマトモな戦力になるか怪しいが、会話が出来る置物が珍しいのも事実だから助けてやるか。
「アハッ!取引成立だ、黒錆び!さぁ暗黒面の闇に墜ちろぉぉぉ!」
そして、黒い靄が置物を包み込んでいく。
ククッ、他者を闇へと墜とし、生まれ変わらせるこの瞬間にとんでもない快感を覚える。仕方ないだろ。
他者の運命を弄んでるこの感覚が気持ち良すぎるんだから。
《黒く錆びれた置物が
《
《突然変異が確認されました。種族・
《職業:テイマーLvが3になりました。》
《テイムLvが3になりました。》
《暗黒面Lvが3になりました。》
「って、はっ!?お前本当に武器なのかよ!」
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