第2話 路地裏の生活

「・・・何処ここ?」


柊真の目が覚めると、都会の路地裏らしき所にいた。

辺りは建物がゴミが散らかっており、中にある食べ物が腐っているのか、

少しばかり異臭がする、周りは建物の換気ファンの音がし、車が走っているのか、

時々クラクションや走行音がする。

おそらく良く栄えた都会なのだろうが、周りには人どころか生物がおらず、

柊真ただ一人が座りながら周りを見渡していた。


「(俺が住んでた場所とは違うが、こんな所知らないな、・・・左目が見えてるし、

  あと戦いで受けた傷すらねえ・・・ってか」


「なんか小っちゃくね・・・?俺の身体」


自分の身体を見ると、20歳くらいだった身体は今では12歳程の身体になっており、

幼さが良く見える顔立ちに変わっていた。


「(だけどあのクソ野郎に切られた右腕は生えてきてないんだな。・・・待てよ・・?」


柊真が立ち上がって、呟いた。


「・・・『剣』」


柊真が呟くと、どこからともなく剣が召喚された。

それと同時に、切られて無くなった右腕が、剣と同調したかのように義手が生成された。


「(能力は無くなっているわけじゃない・・・だがこの身体だ。明らかに戦闘力は落 

 ちているはずだ。どうする?今からでも全盛の力を目指して修行でもするか?

 でもこんな所で剣を振り回したら周りの被害がやばい・・)」


柊真は深刻な顔で今後について考える、だが考える時間が経つにつれて、

顔に落ち着きが戻ってくる。


「やーめた!!」


柊真が声を上げて、手を両手に上げながら笑顔で宣言した。


「そもそも此処は俺らが住んでた世界じゃねえ、明らかに『ヤツ』とその力を感じ 

 ない・・・なんでここに飛ばされたからは知らねえが、もうやるべきことは終わ

 った。・・・俺だけこう生きてるのは最悪に気分がわるいがな・・・。」


前の世界ですべてを失い、復讐は達成されたが、もう愛する人も、親友と肩を並べることも無いと悟った柊真は、この世界でひっそりと生きていくことに決めた。


「前に行った空虚な生活を送ることになるとはな・・・。もうこの力も使わずに、

 ひっそりと生きていくか。」


柊真は取り出した剣を解除し、それに連動するように右腕の義手も無くなる。


「ここからはこの世界だけの物語だ。もう俺が介入する余地はない。」


そう言って背伸びする柊真、空腹だと言わんばかりに、腹が鳴る。


「(腹減ったな・・・。こんな体になっても飯は食わないといけないか・・・。)」


そういって周りを見渡し、ふとゴミ袋を見つける。


「(前みたいにゴミでも漁って食いつなぐか・・・)」


柊真は、ゴミを漁り腐敗臭がする食料を見つけていく。

『転移者』に両親を殺され、家を失った時と同じように、1年振りに彼は路地裏の生活をしていくのだった。



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1週間後・・・・・







柊真は誰かが投げたゴミを漁っては食料を見つける。元々この生活を1年続けていた彼は、順応し、誰にも見つけられることなくホームレスの様に生活していくのだった。


「お!今日は唐揚げの食べかけじゃん!まったく、こんないい物残すなんて考えられねえな・・・。」


柊真は大好物だと言わんばかりに目を輝かす、彼はいつも腐った食べ物や、キャベツ1枚といった日々が続いていたが、久々に肉にありつけるのだった。


「・・・おいガキ、そいつを寄越しな。」

「あっ。」


手に持っていた唐揚げは、柊真に歩み寄ってきた年配のホームレスに奪われ、

当然の様に唐揚げを持っている。


「年功序列って言葉知ってんだろ?見たところお前は12か13くらいだろう、俺はこ

 こでお前がまだ女の腹ん中にいる時からホームレスやってたんだ。人生の大先輩に

 美味しい思いさせるのが後輩の役目だろ?だからこいつは俺の物だ。」


年配のホームレスは手に持った唐揚げを口入れ、汚い咀嚼音を響かせながら唐揚げを嗜んでいた。


「・・・俺今20歳くらいなんだけど?。」


「嘘つけ、20歳がこんな背も小さくねえし、声も高くねえよ。」


ホームレスは冷酷な目でこちらを見てくる。だが興味を失ったのか、背を向けてどこかに行こうとした。


「じゃあな。唐揚げごちそうさん。またうまい物あったら先輩に献上してこいよ。」


「ちょっと待てよ!!」


柊真が大きな声を出すと、ホームレスがこちらに向かって首を振る。


「・・・なんだよ?やるってのか?怪我する前に「まだ唐揚げ4個ぐらい余ってるぞ。」」


柊真がそういうと、ゴミ袋から取り出したのか、今度は食べかけじゃない唐揚げが柊真の手にもっていた。


「・・・どういつもりだ?俺はてっきり切れて襲ってくるんじゃないかと思ってたんだが。」


「そんなことしねえよ。あんたはこの世界の住民だろ?だったら生きるために飯を食わなきゃいけないだろ?それだけじゃ満足出来なさそうだから、俺が今持ってるやつもあげるよ。」


そういって柊真は、手に持った唐揚げを渡そうとする。

ホームレスは奇妙な目で彼を見つめていた。


「変わったやつだなお前・・・名前は?」


「名前?風間柊真だ。よろしくな。」


柊真はそういって唐揚げを渡す。ホームレスは若干迷いがありつつも、それを受け取る。


「・・・なあ、この量俺一人じゃ食えねえかもしれねえ。

 坊主、あっちに俺が住んでる場所がある。そっちで一緒に食わねえか?」


「ほんとか?じゃあお言葉に甘えて。」


二人は、路地裏の奥にあるホームレスの拠点まで歩いていく、最初の絡みとは別人かのように、ホームレスは優しい目をしていた。






「てか、名前で教えたのに読んでくれねえのかよ」


「ああ・・。すまんな、今度から呼ぶようにするよ。柊真。」






 










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