第12話 三人だけのプライベートレッスン
おっぱいとは
つまり幼児、子供だけではなく、大人も発声可能だ。とはいえ、俺は高校生だが。
まあ、なんだ。
何が言いたいかというと、俺は今、おっぱいを拝んでいる。
目の前の紬と環奈が――水着姿なのだ。
「おーい、太郎?」
「佐藤君?」
「…………」
紬は髪色と同じ赤色の水着だ。上下にフリルが付いていて、意外にも女性らしく可愛い系だ。
そして……かなりおっぱいが大きい。なんかこう、こぼれている感じだ。この言葉が適切なのかはわからない。
全体的に肉付きも良い。不可抗力で触れたこともあるが、いい感じなのだ。この言葉が適切なのかはわからない。
運動好きなこともあって、引き締まっている。ケーキは力仕事と聞いたことはあるが、まさにそうなんだろう。
「佐藤君?」
環奈は――なぜかスクール水着だ。いや、なぜでもないか、ここは市民プールだ。普通だ。
色はよくあるネイビーブラックのような感じだ。紬ほど大きくはないが、控えめな感じがまた良い。この言葉が適切なのかはわからない。
この前、バスに乗り遅れてしまったときは、おしりはヨギ〇ーのようや柔らかさがあった。
「おい、太郎! 環奈ちゃんをエッチな目で見るな!」
「佐藤君、もしかして……変なこと考えてる?」
「……はっ。――いや、練習メニューを考えていたところだ」
なんだか、段々と……俺はムッツリになってきている気がする。いや、これが思春期の高校生だ。普通だ。
「本当かなー? まあいいけど……。よし、じゃあ環奈ちゃん、太郎。とりあえずストレッチしよっか!」
「はい!」
「おう」
目の前に二十五メートルのコースが七つ並んでいる。大きさは体育館ほどか。
左右の棚にはビート版が並んでおり、奥には体を温める温水風呂が見えている。
なぜここにいるのかというと、もうすぐ学校でプール開きがあるからだ。
環奈は泳ぎが苦手らしく、不安があるから練習を手伝ってほしいとのことだった。
今日は休館日なのだが、ここを管理している館長が紬のケーキ屋の常連ということで、特別に開けてもらっている。
「おいっちにっさんっし! はい、環奈ちゃんと太郎も!」
「いっちにっ! さんっし!」
「1、2、3、しー」
いつにもなく張り切っている環奈と、まるで先生のような紬。
まあ、楽しそうでなによりだ。
先日、旅館で泊まることになったときはどうなることやらと思ったが、無事にバスで家に帰ることができた。
息抜きもできたし、結果的に良かったともいえる。
日和の母親とはあれから会っていない。が、油断はできない。
またどこかで問題は起きるだろう。そのたびに俺はなんとかするつもりだが。
「こら、太郎! まじめにやりなさい!」
「俺はいつも真面目だ。てか……俺も環奈も学校指定の水着だが、なんで紬はプライベート用なんだ?」
「可愛いからに決まってるでしょ! あ、もちろん、環奈ちゃんはスクール水着でも可愛いよ! むしろ、私としては大好物!」
「え、えええ!?」
「突然性癖を暴露するな。困ってるだろ」
「環奈ちゃんが困ってるところも大好物! 食べたいです!」
「え、えええ!?」
◇
準備体操を終え、ゆっくり足先から水中に入っていく。温水ではないので、それなりに冷たい。
そんな中、紬は助走していた。
「紬、いっきまーす!」
「ちょっと、おい!?」
誰もいないことをいいことに、全力で飛び込む紬。環奈は拍手しているが、別に凄くもなんともない。むしろダメだ。
「でへへー、あっ――」
「つ、紬ちゃん!?」
そして思い切り、お、おっぱいが……!? し、しかし、綺麗なピンク色だn――いや何でもない。
「もう、太郎はやっぱりエッチだ。じろじろ見てる」
「不可抗力だろ……」
そして環奈がどのくらい泳げるのかどうかを確認することになった
俺と紬は横に立ち、環奈の泳ぎの補助をする。
「俺と紬がいる。安心して泳いでくれ」
「わかった。環奈、いきます!」
「紬の真似はしなくていい」
紬環奈は勢いよく壁を蹴り、手を動かした。その手の動きはまるで――水泳選手のように綺麗だ。
水の
なんだ、大丈夫そうじゃないか。
バシャバシャ。バシャバシャ。
ん、どうした?
バシャバシャ。バシャバシャ。
おかしい。なぜだ。なぜか――まったく進んでいない。どう見てもクロールをしているのにだ。
いや……よく見ると立っている。環奈の足が地面に付いていた。
天使環奈ではない。直立環奈だ。
「環奈」
「はあはあ……な、なに!?」
「足を浮かして、バタ足をするんだ」
「え? わ、わかった!」
ずぶぶぶぶ。直後、水中に沈んでいく環奈。
ものの数秒で、俺たちの視界から消えた。
最後に親指を立てていた気がする。って!?
「お、おい!?」
「環奈ちゃん!?」
思わず俺と紬がレスキュー。環奈はまるでフルマラソンを終えたかのように、肩で息をしながら水中から顔を出した。
まだ一分も経っていないはずだが……。
「はあはあ、どうかな? 進んでた?」
もちろん、俺と紬は気まずそうに顔を見合わせた。
「いや、まあ、ちょっとだけ進んでたぞ。後は慣れだな」
「そ、そうだね、手の形なんでばっちりだったよ! ほんと、水泳選手かと思うくらい!」
「ほんと!? 良かった……自信ついてきたかも」
いや環奈、まだ始まって二分だ。自信を持つには早すぎるぞ。
◇
「環奈、再びいっきまーす!」
しかし、やはりというか、運動神経がそもそも良い環奈は、俺と紬の指導でみるみるうちに上達していった。
「やった! 十メートル!」
「さすがだ。この調子だ」
「喜ぶ環奈ちゃんも大好物!」
紬がうるさいな。まあでも、これなら問題なさそうだ。
すぐに目標だった二十五メートルもクリアし、温水プールで休憩することにした。
「良きかな、良きかな」
「紬、某作品のパロディはやめてくれ。色んな意味で危険だ」
「やや、バレてしまったか……」
「ふふふ。ほんと、紬ちゃんと佐藤君は仲が良いよね。そういえば、何歳から一緒なの?」
「「0歳だ「よ」」」
息ピッタリにハモる俺と紬。
「ど、どういうこと? 0歳?」
「「赤ちゃんから同じだからな「よ」」」
再度ピッタリ。
「ハモるな」
「太郎がでしょ」
「やっぱり仲いい……。病院が同じってこと?」
環奈は、なぜか少しだけ悲しそうな顔をする。
「病院も同じ、さらに新生児室も隣同士だったらしいんだよね。といっても、生まれた日でいうと私がお姉ちゃんだけど!」
「いつから俺たちは兄弟になったんだ」
「血の繋がりのない兄弟なんて、男の子が皆好きなんじゃないの?」
「それは可愛い女性に限るだろ」
「な……十分可愛いでしょー!」
「そう思うなら、横の女性を見てみろ」
紬はゆっくりと環奈に顔を向ける。
そして、満足そうに頷く。
「太郎、私が間違っていました」
「よろしい」
「え、ええ!?」
そんなことを話しながら休憩を終え、環奈はまた練習に励んだ。
学校の授業程度であればまったく問題がないところまでぐんぐん成長し、閉館時間も迫って来たので、帰ることに。
最後に二人はもう少しだけ温水プールで温まっていくとのことだった。
「じゃあ、俺は先に着替えてるよ」
シャワーを浴びていると、入口から声がした。煙で少し見えないが……あれは、環奈と紬!?
俺は急いで頭を下げて隠れる。チラリと見てしまったが、二人とも裸だった……。
「環奈ちゃん、さすがだね。もう私より上手だよ」
「そんなことないよ、紬ちゃんの教え方が良かったから」
何故だ……何が起きてる?
いや……よく考えるとシャワー室の入口は一つしかなかった。
更衣室は男女で分けられていたが、シャワー室の片方は封鎖されいるのだ。
無理やり休館日に空けてもらったこともあって、もしかしたらメンテナンスをしていたのかもしれない。
そして――あの二人もそれに気付いてない!?
俺は入口から遠い場所にいるので、二人を横切らないと外に出ることはできない。
脱いだ水着は棚に置いてしまった。さすがに裸体のまま飛び出すのは危険だ。
なんとか出るタイミングを伺わなければ……。
「ねえ、環奈ちゃん」
「うん?」
紬が、環奈に声をかけているのだろう。
「ずっと思ってたんだけど、太郎のこと好きなの?」
「え、ええええ!? なななななななんで!?」
え、ええええ!? な、なんてことを聞いてるんだ、紬っ!
そ、そんなわけがないだろう!?
「そうなのかなって思ってね。それに太郎だって、学年トップを目指したのは環奈ちゃんのためなんでしょ? 、もしかして付き合ってるの?」
と、とんでもないことを言ってるな……。
付き合ってはないが……。
「付き合ったりしてないよ。それに佐藤君は……私のことが好きとかじゃないと思う」
「……なんでそう思うの?」
「紬ちゃんといるときの佐藤君はとっても楽しそうだし、私の前ではあんなに笑顔で笑わないよ」
「それは昔からの付き合いだからだよ。私から見れば、環奈ちゃんのほうが特別な扱いをしてると思うよ?」
紬とは確かに仲がいい。幼馴染だし、気を使わないという点では、高森よりも上なのかもしれない。
しかし、環奈が俺のことをどう思っているのか気になるのも事実ではある。
毎晩一緒に夜ご飯を食べているのだ。気にならないわけがない。
「佐藤君は優しいから私が困っているのを助けてくれてるだけだよ。だから……本当は迷惑かけてるかもってたまに思う……」
「それはないと思うよ。環奈ちゃんと出会ってからの太郎、前よりも明るいからね」
「そうだといいんだけど……。――でも、紬ちゃんこそどうなの? 佐藤君のこと、今まで一度も好きになったこと……ないの?」
……どうしたらいいんだ。俺は……こんなこと、聞いてていいのか?
いや、ダメだだろう。盗み聞ぎじゃないか。
「実は……。――幼稚園の時、好きだって告白したことあるよ」
びっくりしたが、幼稚園の時か。それなら確かに記憶にあるな。
すきー、って言われたような
「紬ちゃん、それって本当?」
「え?」
一段と環奈が真面目なトーンで聞き直す。それには紬も驚いたようだ。
「私、紬ちゃんが本当に佐藤君のことが好きかどうか、聞きたい」
「……じゃあ、環奈ちゃんから教えてくれたら……」
「……私はね、紬ちゃん。佐藤君のことが――」
ちょ、ちょっと待ってくれ!? 一体な、なにを!?
って!? 熱ううううううううううう!
「あっぢいいいいいいいいいいいいい」
「へ、だ、だ誰!? 太郎!?」
「え、佐藤君!?」
俺は背中で蛇口を回したらしい。熱湯が身体中にかかってしまった。
勢いで飛び出してしまい、裸のまま、生まれたままの姿を二人に晒してしまう。
「あ、いやこれは……その……シャワー室が一つしかなくて……」
紬の……豊満な胸と……環奈の控えめな……おっ……ぱ!?
「バカ太郎! 環奈ちゃんのおっぱいを見るな」
そして俺は、紬に思い切りビンタされた。
着替えを終えて合流。
二人とも怒ってはいなかったが、ジュースを奢らされることに。
不可抗力なんだが……。
「美女二人の裸が飲み物代なんて、ありがたく思ってよね」
「ビンタもされてるが……」
「紬ちゃん、事故みたいし、可哀想だよ」
「ダメ。美女のおっぱいは見ても減らないっていうけど、本当は減る。これが真実なの」
いつものなら口答えするが、さすがの今日ばかりは俺も黙っていた。
まあ、確かに……ジュース代で見れるならお得かもしれない。
「ジュース代で見れるならお得だ、とか思ってないよね?」
「思ってません」
危ない。紬も高森も鋭いんだった。気を付けよう。
「で、太郎、私と環奈ちゃんの話聞いてたの?」
「…………」
帰り道、突然紬が俺に訊ねた。環奈も静かに聞いている。
「話? いや、水の音で聞こえなかったが、何か話してたのか?」
「ふーん、ならいいよ。ガールズトークしてただけ。ねっ、環奈ちゃん」
「あ、う、うん。そうだね。秘密にしようね、紬ちゃん」
上手く誤魔化せたか……。
しかし、あの続きはなんて言ったんだろうか。
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