第49話 探索

  

 岩瀬が、武たちに、申し訳なさそうな顔をしながら、よろい武者のあとを追う気はあるか、と訊いてきた。武たちが断っても、ひとりで追っていきそうだった。

 迷ったあげく、武と茂は、岩瀬といっしょに、よろい武者のあとを追うことにした。

 

 橋を渡りきると、右側に大学の図書館、その隣に文科系サークルの部室が割り当てられている古い学舎がある。

 左側には、川の広い土手を利用して造られた公園があった。


 茂たちは、よろい武者の落とした血のような、赤い色をした液体をみつけ、その跡をたどった。

 赤い液体の跡は、公園のなかに続いていた。公園には、4ヶ所の出入口があり、よろい武者は、そのうちのどれかひとつから、出ていったに違いなかった。


 公園のなかに入ると、落ち葉が、つむじ風に巻かれて舞っていて、いっしょに舞い上がった砂ぼこりが眼に入って、涙がでた。三人とも、地面に眼をこすりつけるようにして、赤い液体の跡を探した。

 赤い液体のついた落ち葉が、一枚一枚の距離が離れながらもかろうじて残っており、風で、それぞれの葉が、どのくらい動いたのかと不安に思いながらも、その跡をたどり、南にある出口から公園を出た。


 そこからは、狭い舗装された道路で(家と家のあいだの路地まで舗装されたのは、いつ頃だったろう)、赤い液体は薄くなってはいたけれど、跡を追うことはできた。

 赤い液体をたどり、路地を抜けると、小さな鳥居があり、くぐると、意外に広い境内、その真ん中に、こじんまりとした社殿があった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る