緑色の願望
緑色の願望1
あの騒がしい入学式から数日経って、俺と穂花は着々と悪目立ちしていた。それもそのはず。あの後、部活動巡りを止めると思いきや、結局運動部や同好会を含めて全て見学することになった。この数日、授業はガイダンスが中心な一方、穂花との部活動巡りで問題が多すぎて思い出しても常に彼女との記憶だけだ。
「決めたわよ! 大和、これに名前書きなさいよ」
「あぁ、好きにして良いって言ったけど、ここ数日自分が何してたか思い返せ!」
放課後、俺の席まで来て何かプリントを机に叩きつけた穂花に追求する。まだ数日の付き合いでしかないが、穂花が笑顔で自信満々に何か言い出すと大抵問題しか起こさない。
「うーん、そう言われても私はいつも通りだと思うけど?」
「たとえば2日前。テニス部行ってお前なんて言ったよ?」
「え? あぁ、男女比が偏ってて、男子はテニス部に何を期待して入部したのか気になって」
「穂花に悪気がないのはわかるけどさ。……あの時の部員達の顔は忘れられないわ」
この天然失礼女は笑顔でさらっと安易に突っ込んではいけないことに足を入れる。これは一例でしかないが、サッカー部ではマネージャーの小さい言い争いに首を突っ込み、ボードゲーム同好会では独自ルールを展開してゲームを始め、異例の入学数日で職員室に呼び出され教員と生徒会役員に注意を受ける始末だ。
「この調子じゃ昨日の注意をなんとも思ってないだろ?」
「私だって反省してるわよ。次はもっと上手くやるわ」
両手を腰に当ててドヤ顔を決める穂花を見て俺は額に手を当てるしかなかった。しかし、このままやりたい放題させていては最悪の事態になり得る。ここは面倒だが俺がある程度制御するしかないか。
「それで、この紙はなんだよ?」
「そうそう! もう全部見て回ってもピンとくる部活なかったから作っちゃおうって思ったの」
「……マジ?」
「冗談言うと思う?」
「はぁ」
確かに反省しているだろう。この方法なら現状の部活動には迷惑をかける可能性は減る。ただ、部活を作るとなると俺たちにとって一番の問題が出てくる。
「さてさて、金崎穂花さん。部活には最低6人の署名が必要ですが、俺たちのような悪目立ち連中の作る部活に誰が興味を持ってくれるんだ? というか、目的を先に言え!」
「人なんて活動していれば集まるわよ。……それで、活動目的なんだけど」
そこまで言うと、急に黒板まで歩きだしチョークを片手に文字を書き始める。もちろん、まだクラスメイトも残っており、穂花の奇行に誰もが注目していた。
「こんなのはどうよ!」
バンッと最後の文字を書き終えてチョークを黒板に軽く叩きつけた後、俺に向かって目を輝かせて提示してくる。周囲もその音と声に反応して黒板へ目を向ける。
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