序章

モノクロ

気づいたとき、彼女はこの世から旅立っていた。高校最後の夏休み最終日、俺の世界から色が消えた。響く木魚と念仏はジリジリと照りつける太陽にかき消され、一切の雑音が太陽に飲み込まれていた。


室内では冷房の中、黙々と葬儀が進行している。高校の同級生から地域の知り合いまで数多く参列し、その表情は彼女の旅立ちへの悲しみ一色だ。日差しの照りつける音のない世界から、俺はただその光景を見つめていた。


「……くそっ」


大地を睨みつけ、自分の無力さを嘆く。彼女の死因は自殺だったそうだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る