第22話 藁魔法
「おい、もう止めとけ。これ以上は崩壊の危険がある」
「わらわらわらわら――」
殴るか。
「痛っ……ハッ! なにがあった!? 我が意識を失うなど――」
「もう一発必要か?」
「間に合ってるであります!」
「もうソイツは伸びてる。ほら、見てみろ――」
ウッ。顔だけでも、これだけキモいのか……
『キュゥ……』
「見たくないのであります!」
「……まあいい。しかしなんだ、この大量の
「そこに
「……あるな」
「ついに念願の
「
「兵長は
「そんな大層な呼び方をする魔法なんかじゃねぇだろ。しかもこんな大量に
「……ハッ! その手があったか……!」
なに考えてんだ、コイツは。
「……とどめをさした方が良いでありましょうか?」
「やめとけ。ソイツは動きだけは素早かったが、攻撃できるような体のつくりはしてなかった。ただのキモい無害なモンスターだろう」
これだけキモいと、下手に倒して呪われでもしたら、どうなるか、わかったもんじゃねぇしな。
「よかったー。キモすぎて潰すとか絶対イヤだし」
賢者なら穏便に成仏させられるような手段を持ってそうだが……アイツ、あそこでジッとしてやがる。よっぽどイヤなんだな……使えねぇ。
「とりあえず、ずらかるぞ。長居は無用だ」
「あ、あの……」
「なんだ?」
「
「ハァ?」
「潰れちゃうんじゃないかなって……」
「じゃあ、どかしてやれよ」
「ムリ……」
ハァ……なに言ってんだコイツは。
「体は頑丈そうだし、跳ねる脚力もあった。今は伸びてるが、意識を取り戻したら
キモく、な。
「ちょっと重い布団を被ってるようなもんだ。気にするな」
「はい!」
なんで嬉しそうなんだよ。キモくないのか?
「じゃ行くぞ」
「まってー」
「大変でしたね」
「まったくだ」
「えへへー勝利しましたよーほめてー」
「またアレが来たら、お相手をお願いします」
「イヤ!」
「まあ冗談はこれくらいにして、落とし穴を使ったのは良かったと思いますが――」
「ふふん」
「その後が、なぜ
「えーだって雷の魔法は使えないし」
「使えますよ」
「えっ?」
「昨夜仕込みましたから――ああ、そういえば、その事を言ってませんでしたね」
……昨夜、眠ってるコイツになんか術を施してると思ったら……むりやり催眠にでも、かけやがったってのか?
「おい――」
「非常時ですからね。ひとつくらい、とっさに出せて効果のある術は必要です」
「……チッ」
この賢者が、もし魔王だったら……勝てる気がしねぇな。もっと修行が必要か。
「それでは、そうですね――あの岩に雷が落ちるかな、と思いながら『サンダーボルト』と唱えてみてください」
「えーと――」
片手を振り上げた……おい……
「サンダーボルト」
……狙い通りに落ちたか。あの手に落ちるかと、少しヒヤッとしたぜ……
「……うへぇ……」
「こんな感じで、あなたはいつでも雷を落とせますよ。人に落とさないようにしてくださいね」
「はーい」
「そういう事をアッサリ流すんだな、お前ら……」
「あの、呪文、かんだりしそうで心配なんですけど――」
「そちらも対策済みなので、流暢に唱えられますよ」
「ホント? なんでも!?」
「サンダーボルトだけです」
「えーなんでー! ケチー!」
「なんでもかんでも流暢に、なんて、そんな仕組みがありませんから」
「むー!」
コイツ、アホだろ。
「まあ、こんなところに長居するのもなんですから、さっさと今日の目的地まで行ってしまいましょう」
アレから離れたいだけだろ。それについては、同意しかない。
「……」
ん? コイツ、アレを見つめてやがる……雷でも落とすつもりか?
「……殺るのか?」
「ううん」
「なぜだ」
「人に落とすなって言われたもん」
「……そうか」
四天王相手に変に気を許さなきゃいいがな……まぁ向こうも気を許してくれるんなら、それで丸く収まるのかもしれねぇが……
「……バイバイ」
『キュー♪』
……背筋が凍った! ……魔界にいる方がマシだ。
「……酷い幻聴が襲ったような……四天王の仕業でしょうか……」
「おちつけ。ソイツはまだまだ先だ。ここは平和そのものだ」
「そうですね……うっかり破滅の詠唱を始めるところでした。気をしっかり持たないといけませんね」
……魔王じゃねぇよな……?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます