十投目 どいつもこいつもマニアック過ぎる

ピピーピーピー


ユーシーの湿った秘部に触れる瞬間にマジドウの端末が鳴る。

本来であればじっくり楽しんだ後に端末を確認したいところだが、生憎鳴ったのは仕事用の方だった。


「何だぁ? 俺の女に手を出したら殺すだぁ? 誰だこんなメッセージをこんな時……に——」


宛名を読んでマジドウは震え上がり周囲を見渡す。マジドウが僻地を渡り歩き既に数年が経過していた為に、最先端の娯楽である投げ銭やライブ中継の事など知らなかったのだ。


被害になったチュートリアル参加者の中にも当然フォロワーはいたのだが、マジドウの行いを愉しむ事はあっても、マジドウの事など知ってる者はいなかったのだが、ユーシーのフォロワーの数は尋常では無く、その中にはマジドウが怒らせてはならない人物が混在していた。


それも、何人も——


ピピ


ピピ


ピピ


続いて端末が鳴り続け、そんな人物達から幾つものメッセージが届く。

チュートリアルに指定された区域には一切他の者は出入りできない。

それもチュートリアルに参加したメンバーが全滅するか、生き残った全員がクリアするまでの間という期間限定の話で。


「こいつらが全滅してしまうと、俺が殺される——クソっ! 他は何人生きてる!? こいつは……考えてる場合じゃねぇな。とりあえず服を着せて寝かせるか。衰弱しねぇようにスープとパンも用意するか……おい! ダッキ、居るか!」


忙しく動くマジドウは奥から誰かを呼んだ。


「はい……マスター」


まだ幼く見える少年が弓矢を背負って奥から顔を覗かせる。


「今すぐスープを作れ。それからあっちで何人殺った?」


「二人、そいつとさっきの餌。あと1人も死んだかも」


長く伸びた髪のにフサフサの毛に包まれた耳が二つ飛び出している。

ダッキは獣人の里からマジドウが攫った奴隷の売れ残りだった。


「おいおいおいおい、だったらコイツが最後の生き残りじゃねぇか? 飼い殺すか? ここで? しかし、いやダメだ。これ以上コイツに手を出したら万が一自殺でもされたら……どうしてこうなった——」


ダッキはこんなにも狼狽えるマジドウを見るのは二回目だった。


前に見た時はチュートリアルとはまた別のの討伐対象となり、追われてこの地に逃れて来た時だった。運良く蜘蛛に出会って生き延びる事が出来たが、今回はそれ以上に怯えている様に見えた。


「他、探して来るよ」


「おう、そうだな。おい! その前にスープ作って行け」


「分かった」


——しかし、どれだけ捜索しても見つける事は出来ず。


000:00:05


000:00:02


000:00:01


000:00:00


『チュートリアル第一層。第一クールが終了致しました。初期位置へと転送致します』

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