十一投目 どいつもこいつもクセが強過ぎる

世界は暗転して——


ディア

ユーシー

ルナ

リスト


四名が生き残り最初の部屋へと転送された。


「ユーシー! 生きてたのか! 良かった! 本当に良かったぁ!」


ディアはユーシー無しの攻略について散々検証していたのだが、居たら居たで使えると新たに打算しながら駆け寄った。


「……邪魔」


そんなディアを弾き飛ばし、それ以上に何も話さずユーシーは自分の部屋へと入る。


「……」


そして直ぐにカメラのオンオフを切り替えるスイッチを叩いて切りオフの状態にすると無言のままトイレに流した。


「どうして——」


トイレから出て部屋の中央に戻るとスイッチが現れた。


「そっかぁ……アイテムも何も無いところから現れたもんなぁ……そうだよなぁ……」


チャリーン


チャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャチャ…………リーン。


【所持コイン:1,825,985C 】

【フォロワー:999↑】


『フォロワーが上限に達しました。スキル【魅了Lv1】を獲得しました。スキル【恐怖耐性Lv1】を獲得しました。スキル【不屈Lv1】を獲得しました』


「ははは——」


ユーシーの乾いた笑いが部屋の中に溶けて行く。


————

——


「ユーシー……それよりもお前達はどうやって生き残ったんだ? ルナ、お前は死にたいんじゃ無かったのかよ? ドガートは? 知らないか?」


「知らないわ」


ルナは首を振って部屋へと入った。


「あの——」


「どうした? 何か知ってるのか? 部屋に入ったら交流は出来ない。ここで少しでもで情報交換をしようぜ」


そう言いながらも、ディアが自分から有益な情報など与えるわけが無いのだが。


「俺は……蜘蛛に捕まってました」


「捕まって、殺されなかったのか?」


「繭にされて保存食になってました……」


「繭? 保存食?」


こいつ、本気か?

冗談じゃ無いよな?

意味が分からん。

秒でエンカウントして繭になって保存食になって、こんな奴より先にドガートは死んだのか?


——運か。


運が悪ければそうなるのか。

だとしたら、こいつは運が良かったのか?


いいや、分からん。

分からん事が多過ぎてこいつと話していると脳がバグる——などと、考えを巡らせる事数秒間。


「あの……」


その沈黙に耐えきれずリストは口を開いた。


「あぁ、そうだったな。お前の——そうだ、名前は——リスト……リストだな。リストは部屋に戻ったらどうするつもりだ?」


「もしよかったらパンをくれませんか? 食べる物だったら何でも良いです」


「は?」


その一言を聞いてディアの興味は一気に失せた。その程度のレベルか——と。


「あぁー。君、もういいや。じゃあな、頑張って次も生き残れよ、は俺で何とかするわー」


「……あの、パン」


「自分で何とかしろよ。ウゼー」


バタン——


「どうしたら良いんだよ……おい! 誰か教えてくれよ! なぁ! 見てるんだろ!」


一週間の間、腐臭漂う蜘蛛の巣の中で生き延びる事に必死だったリストの中で何かが切れた。


木で作られた椅子や机を投げて殴って破壊して声を荒げて暫くの間叫んでいた。


「痛っ——」


それは偶然の事だった。

飛び散った木片が跳ね返り、その中でも一番太い木片が腕に刺さってしまった。


「痛ぇ——何でこうなるんだよ……」


『自業自得だ。モブが——』


そんな視聴者の声が聞こえた気がして木片を抜くと天井に向けて投げつけた。


次の瞬間に激痛が走ったと思ったら、傷口が淡い光を放ち修復されて行き、痛みも直ぐに和らいだ。


『条件を満たしました。スキル【痛覚耐性Lv1】を獲得しました。スキル【投擲Lv1】を獲得しました。スキル【反射Lv1】を獲得しました』


チャリーン


スキル獲得のアナウンスの後に何かの音が脳内に響く。


「これは、もしかして——」


何かに気付いたリストは自室の部屋へと続くドアノブに手を掛けて考え直し、扉を開いたままに部屋に散らばった木片を全て投げ入れた。


投げ入れた木片が次々に修復されて椅子と机が形成されて行った。


「絶対に許さない。蜘蛛もディアも、これを見てる奴らも。良いよ……最強の悪役になってやるよ。こんな趣味の悪い見せ物で楽しんで奴等なんて全員殺してやる! 殺してやる! 殺してやる! ぶっ殺してやる! 絶対にそこまで行ってやるからなぁ!」

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