七投目 痛みはリアル過ぎる
「グッ……痛ぇ……」
肘の下に突き刺さった矢先は骨を砕き貫いていた。身体は鍛えていても、そんな痛みの経験の無いドガートは両膝をついて真っ青に顔色を変えて震えている。
「寒ぃ……何だよ、この血の量は!」
「大丈夫です! 直ぐに治療します」
シュコン——
ディアがドガートに肩を貸して立ち上がった直後。ドガートの頭があった場所を弓矢が通り過ぎて地面に突き刺さる。
「ここは危険です! 直ぐに建物の中に!」
「ググゥ……」
ドガートは疲弊しきっていた。
一人では歩けず、巨大な身体をディアに預ける。
「しっかりしろよ!」
見捨てるぞ——と、言ってしまいたい心情を吐露せずに何とか建物の中に逃げ延びた。
一つ、弓矢が蜘蛛を殺す必須アイテムになり得る。
一つ、狩人が俺たちを狙っている。
一つ……
チュートリアルだろ!
俺達に有利な事なんて何も無いのかよ!
「ディア……」
その筋肉とスキルは飾りかよ!
情けねぇな!
——と、言いたい衝動を必死に堪えた。
「ユーシーが心配だから様子を見てくる。簡単に血は止まったから死にはしない」
そんな事を考えながらも、しっかりと止血を行って布を巻いて固定すると、頭の中を整理しながらディアは立ち上がった。
「おぉ……」
「その矢は抜くなよ。失血死するぞ?」
「分かった」
————
——
——死にたく無い。
そう思いながら湖に飛び込んだのはルナだった。
散々死にたいと思ってこの日を待ち侘びていたルナだったが、森で見つけた小屋で粗暴な中年の男に辱められそうになり、必死で森を走り抜けた。
途中、
その行動が結果的に功を奏す。
水が苦手な
視聴者達の失笑は溜息へと変わり、糸が絡まり身動きの取れなくなった我らが主人公は遂にはフレームアウトしてしまう。
そんな事を知らず、そもそも興味の無いディアは何か攻略の糸口が無いかと探りながら気持ちを落ち着かせていた。
解放されたミッションは——
1【ミッションの全容を調べろ】
5【狩人の正体を暴け】
6【狩人の弓を手に入れろ】
8【
「8が最後のミッションだとしたら、あと半分で全てミッションが解放されるって事か——」
「やったー! 買える武器増えてるじゃん」
真剣に考えているディアの横でユーシーは勝手にタブレットを触って購入リストを確認していた。
「勝手に触るな!」
「良いじゃん別に」
「——待て、今なんて言った?」
「良いじゃん?」
「違う! 弓が増えてるのか!?」
【武器】
【狩人の弓矢】——解放100,000C
「って! こんなん誰が買えるんだよ!」
「私、買えるよぉ」
「本気で言ってるのか?」
「本気だよ」
奪う事を前提として考えていたディアに光明が差す。
「あとはここからどうやって生き延びるか——だな」
全てのピースは揃った。
失敗条件は死亡——つまり生きていればチャンスがある。
そして、タブレットに表示された数字。
167:24:36——
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