六投目 主人公が不遇過ぎる
そんな中——
我らが主人公リストは——
森の真ん中に一人転移していた。
ここは、どうしてこうなった——と。
結局は声を発する事なく森の中を彷徨うが、彷徨って約一分。息を押し殺して大樹の陰に身を隠した。
『リストが
それは五人全員の脳裏に響く。
あんなの絶対殺せない。
絶対に無理。
討伐!?
無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理——無理!
軽自動車程度の大きさの蜘蛛の前脚の二本の形状は、巨大に成長した木々さえも、軽々と斬り倒せる程に鋭利な刃で出来ていて。全身を覆う鋭い毛針は鋼の様で、木々とすれ違うだけで木の皮が削り取られて行き。それでいて、足音は殆ど聞こえない。
リストも木々が擦れる音に違和感を覚えなければ、今頃蜘蛛に食い散らされていただろう。
『ドガートが
「何だコレは?」
誰も居なくなった廃墟の街。
ゴーストタウン【モスリード】
一階建ての建築が大半の中で、一際目立つ三階建ての最上階にあった骸を、何の感情も抱かずに、骨がパキパキと折れる音も気にせず、全身をくまなく弄り手紙を取り出したドガートはミッションの解放に困惑していた。
「一旦、ディアのところに戻るか——」
二度の声を聞いてディアは考えていた。
一つ、リストとルナも転移して来ているがスタート地点が違う事。
一つ、蜘蛛という名のモンスターがどこかに居て、ミッション達成の条件が一体だけで良いという事はそれだけ強いという事。
「フフッ——」
少しだけ笑って呟く。
「そんな凶悪なモンスターに初見でエンカウントするリストって、どんだけだよ」
一つ、接触する事が
そして、それは彼等を視聴している数千人の人々にも言える事で、分割されたモニターではリストが一際多くの面積を占めて放映されて居て、それを見て多くの人々が笑い転げている。
そんな事を知らないリストは必死で震えを堪えて息を押し殺し、蜘蛛が通り過ぎるのを待つ事しか出来ないでいた。
「おぉ! ディア! こんなもん見つけたぞ」
「蜘蛛か、或いはモンスターは見てないか?」
「それがいねぇんだよなー」
そう言いながらドガートは不満な表情を浮かべ、ディアに手紙を渡そうと手を伸ばしたところを——
シュパンッ——と、弓矢が貫いた。
『ドガートが
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