五投目 チュートリアルがマニアック過ぎる
【チュートリアル第一層:モンスターとの遭遇】
「おぉー! ディア久しぶりだなぁ!」
「ドガートさん!? 防具は!?」
「必要ないだろ!」
部屋の扉は同時に開き。
待機部屋に最初に現れたのはドガート。
次いでディア、ユーシー。
ディアは上半身裸のドガートを見るや直ぐに防具をつける様に助言するが聞く耳を持たず。
「これ、重くて動けないんだけどぉー!」
【サイズ調整】をせずに【金属の防具セット】を身に付けるユーシーを見てディアは考える。
あの防具セットを奪えないか——と。
防具は装備してタブレットで登録を行いサイズを調整して始めて機能を発揮する。
その事を教えようかと考えて「脱いだ方が良いだろ——」と、自分の物にする方向で話を進めた。
一番賢そうなドガートがこんな様子だったら、どうせ誰も使いこなせて無いだろう——と、考えて。
ディアは結局投げ銭が足りずにセットを購入する事が出来ず。胸部と脚部を守る防具と【金属の剣】を選んだ。
「こんな事だったら防具は買わなくて良かった」
「本当にだよ。なんで、こんなにサイズが合わないの?」
「さぁ? 何でだろうな?」
そんな会話を気にする様子も無く、ドガートは剣を振っている。
「おぉそう言えば……スキルとか出て来たんだがディア、分かるか?」
「スキルですか! 何のスキルです!? どうやって出たんです?」
「【鎧切り】ってやつで、剣振ってたら生えてきたんだ」
「剣を——そうか、そういう方法があるのか。でも今から試す時間は無いだろうし」
最初の部屋には新たに一つ扉が現れていた。
その上では8:32からカウントを削って行く表示が。おそらく8分後には扉が開きチュートリアルが始まる。その事に気付いたディアはスキル習得を次の機会に見送る事に。
0:58
0:32
0:11
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そして、扉が開かれた。
『チュートリアル第一層へと移動します』
どこまでも高く突き抜ける青い空。
草花の香りが風に乗って届く。
地面は砂を固めた程度の舗装で建物は煉瓦やタイルで作られた一階建が殆どで、均等に並んで建っている。
「街の中へ移動した?」
「そうみたいだな!」
「ちょっとー! 三人だけ? あとの二人は!?」
『
「ミッションってなによ!? あんな恥ずかしい思いして、まだこれ以上何かやらせるわけ? ねぇ、ディア。何なのこれ」
知るか、黙れ——と、言いたい衝動に耐えてディアは考え込んでいる。
「とりあえず、俺は行くぞ」
「ドガート待て!」
「何か分かったら教えてくれ」
剣を担いで走ってその場を去るドガートを制止する事が出来ず、ディアは伸ばした手を握りしめて近くの建物へと入った。
「カビクサっ」
「確かに。埃も溜まってる。誰も使ってないのか?」
不安な様子のユーシーの背中には【金属の剣】が二本ぶら下がっている。
その様子を見て防具の事を思い出してディアは呟いた。
「いったいどれだけ稼いだんだよ」
「これ? 部屋にはもっといっぱいあるけど、コインばっかり無駄にあるの。一本使う? 私を守ってくれるんだったら良いわよ。防具もまだあるし」
「可愛さか? 可愛さなのか?」
「そ、そうよ! 私が可愛いからみんな応援してくれるのよ!」
まさか、アレやコレやで稼いでるなんて言えないユーシーは必死に誤魔化すが、ディアの興味は防具と武器に移っていた。
「コレで良いかな? どうだ!? キタ! よし!」
「凄い! 何したの!?」
落ちてた防具と剣をタブレットに登録して自分の身体に合わせて調整しただけなのだが。そんな事を知らないユーシーはタブレットを所持して無い為に何も出来ずにいた。
「次からタブレット持って来たら教えてやるよ」
「自分だけズルいよ。私のだったのに……」
悲しそうな表情を見ながら、次なんて無いかもな——と、ディアはそんな事を思いながら笑いを必死に堪えていた。
コレだけの装備を無駄には出来ない——と、思いながら。
「よし、俺達も捜索しよう。ここに居ても何も分からない」
「私は留守番でも良い?」
「しょうがない……良いよ、俺が見てくるからここに居てくれ」
「本当に! ありがとう! 私に出来ることあったら何でも言ってね!」
だったら今すぐ偵察して来い——とは言えず。
コイン役として多少使えれば良いかと考えて感謝の意を伝えると、建物から出てディアは探索を開始した。
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