決戦準備(4)
「え?八葉って彼女いたことないの?」
「ないぞ、今まで生きてきて一度もない」
「お前今までどんな人生送ってきたんだよ」
商業施設に入ってから少しの会話の後に浜財が信じられないものを見るような目で呟いた。
わかってはいたが改めて言われると心にくるものがあるということを浜崎は学んだほしいと思う。
「八葉ってもしかして性格がかなりひどいのか?お前ならどんな性格でもそのキャラで通せる強さを持ってると思うんだけど」
「ひどくはないぞ、ただただ彼女ができない。それに尽きる」
「告白とかはしたことはあるのか?」
「うん、つい最近に戦歴に黒星が1つ追加された」
「生命の神秘を感じるよ」
顔が変わる以前のことはあまり詮索してほしくないため、どうにかして有耶無耶にしようと考えていたが思わず浜崎の方から舵を切ってきた。
「生命の神秘ってお前…なんてこというんだ」
目についた服屋に入りながらも反論する
「そりゃ八葉みたいなイケメンに対して女子はなにも行動をしなかったんだろ?あれか?逆に見守る存在になってやらねばみたいな比護欲みたいのでもでたのかね?」
反論に対して雑な意見を述べた浜崎は目についた服をやけに手慣れた動きで物色していく
「知らないよ、とにかく中学でも彼女ができなかったからな、高校では作りたいもんだよ」
「そうか、好みとかはあるのか?」
「あるけど、聞きたい?」
ちなみに昔、髪型に関してはショートも良いと思っていた時期があったが、今は似合えばどっちでもいい派だ。
「聞きたいけどやめとく。今日の趣旨からは外れるからな、聞くべき時に聞く。そういえば八葉、お前好きな服ってどんな感じ?」
「あーシンプルな感じで頼む。ぶっちゃけていえば似合えばなんでもいい。」
「1番困る返答はやめてくれ…まぁシンプルが良いってんならTシャツとパンツにワンポンイトつければいいんじゃない?」
至極真っ当な意見である。迷える子羊に活路を示すのはいつだって先導者であり、かつての子羊だ。
そのかつての子羊の意見を聞いた俺はシンプルにTシャツとパンツをカゴに放り込んでいく。
「ああそうだ。まだ寒くなる時もあるだろうし少し薄めの上着くらいは買ってもいいかもな。」
確かに暖かくなったとはいえ日の昇らない時間はまだ寒い。そのため上着はあった方がいいだろう。
上着を追加でカゴに放り込む。追加で何あるか考えるが特に思いつかない。
資金的にはまだ買えるため、店内に展示されているマネキンに視線を移す。
目などがなく、顔の輪郭のみにも関わらず着こなしている。
その中で良さげなものもあったため、それを参考に何個かカゴに放り込んでいく。
とはいえ予算は限られているかつ、服はそう何個も買える訳ではないため複数に絞って買っていく。
普段はなんとなくで決めているが今回は最後のフィルターとして浜崎がいるため一応どうかチェックをしてもらう。
浜崎いわくあまりそういうことはしたくないらしいが、今回だけは勘弁してほしい。
そうやって最終的に決まった服を決済していく。最近の服屋はセルフレジがあるためそれを使っていく。
しめて15,000円くらい、それを買えるお金を出してくれた親に感謝を挟みながら決済を済ませる。
店のロゴが印刷された紙袋を提げつつ、ショッピングモール内を歩く。
一つ目の店で買い物を済ませてしまったため、予定よりも早く目的がなくなってしまった。
「予定よりも早く終わったな」
「そうだな、どうする?他に行きたいところとかあるか?」
「うーん、あんまりないな。浜崎はどうだ?浜崎もも服とか見るんだろ?」
「おう、さっきの店だと自分にピンとくるものはなかったからな、悪いけど付き合ってくれるか?」
「もちろん、まだ予算的にはオーバーしてないからな。俺も良いのがあったら追加で買うよ」
「じゃあ適当に歩いてみようぜ。なんかあるかも」
そう言って近くの店舗を指差す浜崎に対して頷く。
決戦の時は近いが、まだ焦る時ではない。その間の余暇を楽しもう。そう思った八葉は浜崎とともに近くの店舗へと歩を進めた。
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