決戦準備(3)
その翌日の放課後、教室の中でとある人物を待っていた。
それは高校に入って関わった人物の中で1番服に詳しそうな人物だ。
その人物は現在ちょっとした用事があると席を外している。多分提出物なり雉でも打ちに行ったのだろう。それを待っている間は他のメンツと話していた。
今周りにいるのは斉藤と他のクラスメイトだ。斉藤はいつも通り明るく満遍なく話題を回している。それに応える形で他のクラスメイトも話を深めていく。自分は参加したつもりはないのだが、ホームルームが終わってからいつの間にか斉藤を話題の潤滑油とした会話の輪が広がっていた。
会話の話題は動画サイトに上がっている配信者のことだったり、そこから派生して好きな配信者だったり、ゲームの話題へと広がっていく。
どうやら斉藤はあまりゲームをやらないらしい。
理由としては単純に興味の方向性の違いだそうだ。
まぁ活発なイメージからゲーマーというのも悪くはないが、概ねイメージ通りと言える。
じゃあゲーム以外で何をするのかと言ったら色々とネットの海を渡り歩いたりすることもあるらしい。
「それでねー、ネット見てたら可愛い動物の動画がでてきたりしてつい見ちゃって寝落ちしちゃうんだよねー。そして気づいたら朝だったってこともしょっちゅうでさー」
とこんな調子でほんわかと会話が続いていく。かなりの頻度でこちらにも話が回ってくるのだが、生憎とそれを上手く返すことができないため、かなり申し訳なく思っている。
早く来てくれないかなぁ…そう思っているとガラッとドアが開いた。
入ってきた人物は八葉の姿を確認するとツカツカと迷いない足取りでこちらへ向かってきた。
普通来られる方は少し警戒するはずだが、その人物を呼び出したのは自分のため、全く驚きもない。
「わりぃ、少し遅れたわ。忘れた提出物だしたら腹痛になっちまった。」
「いや、気にしてないよ。そもそも呼んだのは俺だしな、」
「助かる、じゃあ行こうぜ」
そう言って遅刻に対する弁明と謝罪の言葉を口にしたのは、さわやかさんこと浜崎だ。
彼には彼女がおり(カラオケの時に聞いた)、その時に見せてもらったツーショット写真を見る限りファッションセンスはかなり良さそうだ。
そんな彼は昨日の夜にお願いしたにも関わらず即座に了承してくれた。
「今日は付き合ってもらってありがとう」
「気にしなくていいよ、俺も入用だったしちょうど良い。」
「どこか出かけるのか?」
「ああ、メグと来週出かけるんだ」
「へーどこ行くの?」
「どこって言われてもなー、まだ決めてないんだ。多分今日か明日には決まると思う」
「決まってないのか、普通行くところ決めてから誘ったりするもんじゃないのか?」
「最初はそうだったよ、今は出かける予定合わせてから行くところを決めることが多いかな」
「付き合いが長いとそうなるもんなのか?」
「それは人によるんじゃないかな?」
そういうものか、と一人で納得しながらも目的地へと向かう。向かう先は高校の近くにある大型商業施設である。
ちなみにメグという子は浜崎の彼女であり、中学2年からの付き合いだそうだ。
写真で見たところ髪を一つにまとめた感じの活発そうな雰囲気だった。
「俺のところだとメグが行きたい場所を出してくれることが多いんだけど、たまに俺の行きたいところに行こうってなるけど俺の行きたいところは大抵遠いんだよなぁ」
「へー、どんなところ?」
「んー、最近だと温泉かなぁ。ほら、近くにあんまり有名どころとかないじゃん?だからたまに行きたくなるんだよ」
「いいじゃん、行ってきたら?日帰りとかでも行けるところあるでしょ?」
「ゆっくり入りたいからなぁ、最低一泊はしたい。」
「ちょっとわかる、温泉って………あ、見えてきた」
「本当だ、相変わらずでっかいなぁ…」
「浜崎入ったことあるのか?」
「高校と割と近いからね、結構来てるよ」
「俺来たことないわ、案内頼んだ」
「いいぜ、ここ結構店あるから好きなのごあると思うぜ」
そう言って浜崎は笑ったが、それを見た俺は浜崎に対して笑顔でサムズアップを示した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます