決戦準備(2)

「困った、これは本当にマズイ」


現在20:20分、家に帰ってからの流れを一通り済ませた八葉の自室にて呟いた独り言だ。


目の前にはクローゼットがあり、やけに間の隙間が大きいのがかなり印象的だ。


架けられているのはクローゼットの主な役割通り、服がかけられており、そこに八葉が着る全ての服が揃えられている。


1番多いのはTシャツであり、白が最も多い。


何故白なのかと問われれば、1番シンプルで無難、それに尽きる。


ズボンはチノパンが1番好んで使うため3着待っており、色は全て黒だ。


何故3着なのかと問われれば、色落ちが嫌だ、それに尽きる。


以上から察せられる通り夏場だと白のTシャツに黒のチノパンという組み合わせをプライベートで1番着ている。


今着たらどうだろう、ちょっとした好奇心から着てみた結果、普通に着こなしていた。


もうこれで良いんじゃないかなぁ…そう思った矢先にある事を思い出した。


それは中学3年の初期のころ…今からほぼ一年前だ。


その頃は卒業式に告白した子に対しての恋心を抱いた段階だ。


その時はそれはもう考えた。


どうすれば彼女に相応しいか、その一心で髪型なども考えたし、話術も頑張って身につけようとした。その中で真っ先に変えようと考えたのは服装、すなわちファッションだった。


親から服を買うお金を貰い、知りうる限りで1番そういうのに詳しい友達を連れて付近の大型商業施設に買いに行った。


まずは従来の方式の評価から、自分の好みで組み合わせを考えて試着した。それを見た友達からの一言は見事に私のファッション感をぶち壊した。



「ダサい」



シャッとカーテンを即座に閉めて服を伸ばさないように丁寧、だが素早く脱いでゆく。


途端にこの服を着ていることが恥ずかしくなったのだ。


着替え終わってもう一度カーテンを開けた先にいた友人は特に気まずそうな顔はせずに笑顔で探しにいこうぜ!って言った表情を浮かべていた。


そこから先は完全に友達のラジコンで選んでいったものの、自分からしたら少し恥ずかしかったため拒み、また友人が提案してそれを拒む。

そういうループをしていった結果シンプルな現在まで続いているスタイルに落ち着いた、というわけである。


その友人はシンプルすぎーっ!などと言った感じで不満を述べていたが、それは許してほしい。



以上の経験から自分の好きは異端であることを念頭にして物事を考えるようになったのだ。


その経験が示す答えは「取り敢えず第三者に意見をもらえ」である。


そう決めた八葉は取り敢えず思い当たる人物にメッセージを送る。


今高校で知り合った物の中で1番仲の良いと思っている人物


その人物は送って5分くらいでメッセージは返ってきた。


「どうした?」



それを確認した八葉はその人物に対してメッセージを返す。内容としては放課後買い物に付き合ってくれ、という旨だ。


送って即座に返ってきたメッセージには


「いいよ」


と簡潔に書かれていた。


内心ガッツポーズを取った八葉はその予定の日に備えて様々なファッションなどを調べるべくスマホとは別にパソコンを起動し始めた。

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