決戦準備(1)

坂田が参加すると決まった日の夕方、俺はひたすらに考えながら自転車を漕いでいた。


今日も中々に良い天気だが少し風が強いせいで中々に自転車が進まない。


はぁっはぁっと必死に呼吸を繰り返してながらも考えることはやめなかった。


今日は火曜日、つまり今日を入れても土曜日までは1週間もない。あまりにも短すぎる、こういうことになるのは想定していたがあまりにも早すぎる。


早くとも一ヶ月後にある校外実習、もしくはその打ち上げになると思っていた。それまでには万全の準備を整えようと考えていたが甘すぎたようだ。


信号で止まったため自転車を漕ぐのをやめるがそれに反比例して思考の速度は上がっていく


現在考えていることは当日に着ていく服だ。


正直、これが1番の課題だと考えている。


今まで服に関して大して頓着しなかったからだ。


基本中学時代は制服固定だったし、唯一の土日に関しては家を出ずにずっと家に出なかったのだ。


そのため着る服に関しては何着かのセットをローテーションしている状態だったし、今だってその習慣は変わっていない。


じゃあそれで良いではないか、と思うかもしれないがそれは過去の自分だった場合だ。


過去の自分は普通だったが、今は誰もが認めるイケメンだ。そんなやつがダサい格好をしていたら折角な顔が台無しになってしまう。


巷ではイケメンはなんでも似合うという風説があるが少なくとも自分はそう思ってなんかいない。


そういうのはオシャレを極めたイケメンが積み上げてきたブランドのようなものだ、ぽっと出のイケメンが壊していいものではない。




以上から新しい服が至急入用だ。


お金は親から貰うとして問題は服選びだ。


残念ながら自分に合う服を選べるほどのセンスは持っていない。


今まで服に関して無頓着だったのが仇になった。来世からは服に気を遣っていこうと思う。


今すぐにでも調べようと思いポケットのスマホに手が伸びかけたが今は自転車に乗っている、流石にそれはモラルに反する。


後少しで家につく、それを待てないほどヤワではない。


家に着くまでは少しとはいえ多少の思考はできる程度に遠い。そんな時間を無駄にすることはできない。


取り敢えず思い浮かぶ服を片っ端から脳内の第三者視点から試着させていくが肝心の自身の顔が不透明と気づいたため帰ったら鏡を見よう、そう思った八葉は家への帰路を早めた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る