交流(2)

カラオケの時からそうだったが斉藤はやはり物怖じをしないタイプらしい。


もちろん服装はうちの制服だが、妙にこなれた雰囲気を感じる。女子高生が似合う、少し変だがイメージとしてはこんな感じだ。


言動に相応しく溌溂とした感じだが、運動部で培われたものではなく自然に形成された性格だ


「ああ、おはよう。斉藤」


「あら固いねぇ。今年一年は一緒のクラスなんだから全然崩してくれてもいいんだよ?」


「あー、それはもうちょっと待ってくれ。昨日から始まったんだ、だからもう少しこのままでいかせてくれ、何事にも物には段階があるからさ」


そうだ、自分はイケメンとは言えつい最近まではこういった物には縁がない存在だったのだ。そのため距離の詰め方の経験値がまっっったく足りていない。


これが純粋なイケメンだったらスムーズにシフトできるのだろうが今の自分が下手にそんなことをしたらあっという間に引かれてしまう。


ワンチャン今の顔で相殺されるか人懐っこいと判断されるかもしれないが、今の時点で賭けに出るなんてことは以ての外だ。


「だからさ、ゆっくりお願いね?」


そういうわけで自分は敢えてというよりお願いする形で関係の進捗を遅らせる手段に出る


「わかった、よろしくね八葉くん!」


斉藤はどうやら好意的に捉えてくれたようだ


さて、今の状況は偶然会ったとはいえ女子と2人の状況だ。駅から学校までは大して距離はないものの多少は歩く


そもそも登校というのは基本的に男子は男子、女子は女子で歩くのだ、一部でカップルは除外するものの、その全体の中で恋仲でもない男子と女子が登校するというのはカテゴリとしてカップルに分類されてしまう。


つまり何が言いたいのかというと


今の状況を坂田に見られてしまうのではないのかということだ


もし見られてしまい要らぬ勘違いを起こしてしまった際にはワンステップ誤解を解くという手間が必要となる、自分はそんな手間を負うのは嫌だ


ただでさえ恋愛に関しては奥手な方なのだ


しかし、今この状態で別れようとするのはかなり難易度が高い。学校のそばにはコンビニがあるが目的もなく入っての無駄な出費は避けたい


だがしかし、、、、



ぐるぐる、と空回る脳で有効な案が出るはずもなくそのまま斎藤と一緒に校門をくぐり教室に入ることとなった


教室に入るとすでに半分以上は教室に入っており、まばらなもののすでにグループが形成されているようだった


「あ、おはよー」


「おはよー!篠羽ちゃん!」


教室に入った途端に挨拶をしてくれたのは先日のカラオケに参加していた野倉だ。昨日は編み込んでいたが今日は編んだり結んだりせずに流している


「八葉くんもおはよう」


「おはよう、昨日は楽しかったよ」


「こちらこそ、またみんなで行きましょう?」


「八葉くん、ここに来るまでそんなこと話さなかったじゃん」


「悪い、ここ来るまでちょっと別のことをね」


「私と話すことより大切なことねえ」


「ちょっと気恥ずかしくてね…改めてみんなでまた行かない?」


「いいねー!今度はカラオケじゃないところでも行く?篠羽ちゃんは何か要望ある?」


「あ、じゃあボウリング行きたいな。実はやったことないんだよね」


「おーいいね!じゃあ近々行かない?」



斉藤を中心に話が回っていく、一緒に登校して思ったのは斉藤はかなり話を振るのが上手い、話が途切れそうなタイミングがあってもすかさず新しい話題を投げてくれる。そのおかげで今朝は全く黙らずにずっと話しっぱなしだった。


「おはよー八葉」


「おー浜崎、おはよう」


しばらく話していると浜崎がきた。ホームルームまではまだ時間があるため余裕をもって登校するタイプのようだ。


「今さ今度ボウリング行こうって話になっていたんだけど浜崎もどうだ?」


「いいね、行きたい。ボウリングなんて最近は行ってないしな」


「どうせなら他の人も誘うか?親睦会みたいのでやってみてもいいと思うんだけど…」


「俺はどっちでもいいよ、やるとしてもツテがないからなぁ…グループとかってもう作ってるのか?」


「俺が知ってる限りじゃないかな、斉藤と野倉は知ってるか?」


「私は知らないかな?葉月はどう?」


「うーん、私も知らないかな。多分作ってるところもあるだろうけど多分まだそんなに人数集まってないだろうし…決めた!作っちゃおうか!」


そう言ってスマホを取り出した斉藤は素早く操作していきグループを作成した、自分にも招待の通知が来ていた。


「よし、できたね!じゃあ行ってくる!」


そう言って斉藤は今登校しているクラスメイトに端から話しかけていった。


「やばい行動力だな…」


「葉月はそういうタイプだよ、積極的にいく、そして分け隔てなく付き合える良い子だよ」


そういう野倉は優しい眼差しで斉藤を見つめている。どうやら野倉的には対等な関係の妹のような感じで見えているようだ。


現在来ている人に話しかけて加入を済ませるとこっちへ戻ってきた。あとは各自で任せてクラスのグループに招待させるようだ。


一つの発言で行動してくれる斉藤は間違いなく、良い人だ。この高校生活を送る上で欠かせない友達になるだろう。


坂田と付き合う上できっと協力してくれる


ひとまずはこの親睦会で斉藤のような人と仲良くしていきたい


胸の高鳴りはこれからの期待を加味してさらに加速していった






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