1日目の終わり(1)
「じゃーねー!また明日ー!」
斎藤を筆頭に口々に別れの言葉を口にする
今は大体午後5時過ぎ、なので約2時間滞在した形だ
その間に色々なことを話しみんなのことを知ることができた
まず最初に女子3人組の内、斎藤と三橋は同じ中学であり、中山は三橋と塾が同じだったらしい。斎藤と中山は初対面なものの斎藤の明るく誰にでも話しかける性分で入学式早々に仲良くなったらしい
野倉は誰とも接点はないものの、入学式前の席の配置のところに間違えて三橋が座ってしまったことがきっかけらしい
そのつながりから今日のカラオケのメンバーが決まったらしい。
他の誘いは特に何も考えておらず、教室に残っていた人に対して片っ端から声をかけていったそうだ
しかし案外用事のあるものや別口の集まりに顔を出すものが多かったらしい
自分的には9人も集まっただけ上等と考えているが、彼女からしたらもうちょっと来るもんかと思ってそうだ、こう考えてしまうのは平凡な自分が考えているからだろうか。
しかし、この顔になったからには思考が塗り替わるに違いない。
無駄な希望かもしれないが、高校生活が始まるのだ。これくらいの軽い願いを持っていたって罰は当たらないだろう
ちょうど駅の改札を通りすぎ、ホームへと向かう。電車がくるのは大体3分後なのでかなりスムーズに帰ることができる。
この駅から家の最寄りまで約5駅、乗り換えの必要もなく学校の最寄駅が終点のため乗り過ごしたり、寝過ごしたりすることはほとんどないと言ってもいいだろう。
コツコツと階段をゆっくり降り電車がくるのを待つがアナウンスが入ったため待つのは数十秒もかからないだろう
その間に全員と連絡先、LOINEを交換したため挨拶くらいするか、と考えスマホを取り出す
トーク一覧を開くと個別のチャットが表示されるが、別口でグループの招待が来ていた。、
メンバーは今日の9人、後々クラスラインに変えるのかはわからないが断る理由は皆無なため承認し、適当にスタンプを送る
そのタイミングで電車がやってきた、車内を見渡す限りでは席はかなり空いている。都心付近ではこの時間帯は混んでいて座る場所なんて見当たらないだろうが自分の高校もといこの周辺地域は都心には近いものの駅は真逆だ。
ドアに近い位置に座り、またスマホを開くと早々にグループのLOINEに変化があった
内容としては明日の確認だった、その発端は高田からであり返信として野倉が明日の予定を話していた。
早々にLOINEを閉じてゲームを起動させる。五駅は微妙な距離だがログインする分には全く問題はなくむしろちょうどいい時間だ。
そうやってログインボーナスやデイリーを消化していくうちに目的の駅に着く。
扉が開かれた先にホームに繋がる階段やエスカレーターはなく、近くの歯医者の広告が目に入ったどうやら少し後ろ過ぎたらしい。
せっかく電車に乗っているのだ、階段やエスカレーターに向かって歩く分は電車に走ってもらいたい。
明日はもう少し前に乗ろう
そう思いつつも歩き続け改札を通る。家までの自転車は駅に隣接してある駐輪場にありそこの定期もすでに購入済みだ。
その後はどこに寄る気もわかずに駐輪場に辿り着く。ちなみに乗る自転車はクロスバイクではなく、安心と信頼のママチャリだ。クロスバイクやロードバイクを乗ってみたい気持ちはあるものの肩に乗る教科書の重みを考えると少し気が重く、家までには坂も多いためママチャリに乗っている。
ママチャリに跨り家に向かってペダルを踏んでいる最中にふと頭に浮かぶことがあった。
今の顔はイケメンだ、まごうことなき。
しかし想像してみてほしい、我々日常的に見るイケメンはママチャリに乗っているところを見たことがあるだろうか?少なくとも自分にはない。
そう考えると衆人的なイメージ保持のために買うのも吝かではないのでは?
もし買うとしたら問題が発生する。
その自転車を買う金銭の問題だ。
今現在私こと八葉幸司の月々のお小遣いは一万円だ、少し多いかもしれないがこれには訳がある。それは両親との約束だ。
・お小遣いをあげる代わりにバイトは禁止する。
・その代わり学校内の定期テストの順位を三十位以内に保つこと
・一回はそれに入らなくても許すが二回目からはお小遣いはなしにする
内容としてはこんな感じだ、これに加えて入用になったものや少しお金をだしてほしい時は相談することを約束した
そのため高校生にしては十分な金銭を得られている。
今現在の所持金は約二万円、クロスバイクを買うとしても足りない。
親に相談しても多分いい顔はされないだろう、一応聞いてみるものの多分突っぱねられて終わりだろう、動機としては不純であり自転車が壊れているわけでもないのだ。
次に買い替えるときにはママチャリじゃないほうにすればよいがいつ壊れるかもわからないためしばらくは安心と信頼のママチャリだろう。
自転車と連想して思い出したが、今の自分の顔をみて両親はどう思うだろうか。
いくらイケメンになったとはいえ親から認識されないのはあまりの厳しい、それに加えて警察を呼ばれた日には流石に泣く自信がある。
そうこうと考えているうちに八葉と書いている標識が目に入る、家に着いてしまったのだ。
思わず扉を開く手が止まる
もし誰とかそういう扱いになったらどうすればいいだろうか?
一番にそう思った、しかし動かねばならない。
ええい、と意を決して扉を開ける。
「ただいま!」
「あらおかえり、ご飯はもうできてるから。手を洗ってさっさと風呂に入るかして食べちゃいなさい。」
どうやら声は問題ないようだ、取り急ぎ部屋に荷物を置いて着替えを取り風呂場に向かう。
手を洗いうがいをして一旦リビングへ向かう、喉が渇いたため何か飲むついでに姿の確認だ。
リビングに入ると母親がソファでくつろいでいた。扉の開いた音に反応し自分の方に向き直る
「おかえり」
いつも通りの声だ、いつもの、自分が帰ってきたときの、変わらない声
「たらま」
少し反応が遅れたもののこちらもいつも通りの返事を返す。
いつも通りに冷蔵庫を開けて注いだいつもの冷たいお茶はやっぱりいつも通りに口の中で若干の渋みくぉ広げた
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