いざカラオケへ(2)

女子が四人に男子が五人の合計九人のそこそこの大所帯で集まった俺たちは今カラオケに向かっている。


現在は学校の下駄箱に向かうべく廊下を歩いている。


時間が経ち生徒が帰り始めたとはいえまだそこそこな数の生徒がいた。その中で歩いている我ら九人はかなりの視線を集めていた。


理由はおそらく自分であろう、今の自分は自他ともに認めるイケメンなのだ。


最初は九人の喧騒に視線が行き、そしてその九人の顔を見る、そして自分に移り、その後視線が動くことは大多数の男子を除けばほとんどいない。


前の自分ならば普通に嬉しいが、完全な一目惚れをした今はその視線の中に坂田はいないため大して嬉しいと感じない


「そういえば今から行くところ持ち込み大丈夫だから何か持っていきたいものある?あれば近くにコンビニだったりスーパーだったりあるんだけど」


男子四人のうちの一人、確か・・・柳だ。柳が持ち込む物に関する提案をする。


カラオケは歌う以外だとやることはほとんどないため次の選曲を決めるか、友達と話すか、歌っている人を囃し立てるかの三つくらいしかないのだろうか


そう考えると持ち込みの提案はかなり魅力的だ


暇なときの選択肢が増えることはいいことだし、九人の大所帯のため歌う順番のローテーションの速度は最悪だろう。そのため待つ際の楽しみは多いほうがいい、費用のことも考えたらかなりお得な感じもするが


「持ち帰るゴミが面倒くさくない?ゴミを放置して気持ちのいいもんじゃないでしょ?」


「うーんそれもそうだけど、少しお腹減っちゃってるんだよね」


「じゃあなにか食べてから行く?」


「それも悪くないけど中途半端な時間だからなあ・・・よし決めた俺がゴミ持ち帰るから買っていかないかい?」


「マジで?いいのか?」


「いいよ、皆もそれでいいかな?」


持ち込みの後処理を柳が申し出る。


「俺はそれで構わないよ」


自分はそれで構わなかったため、賛成を口にする


浜崎を含めた七人も賛成を口にしたためひとまずの行先は少し離れたコンビニではなく直線方向にあるスーパーに決まった。


予算としては一人、二百円までとなった。各々その予算で買いに行く感じだ。量としては九人もいるため十分すぎるだろう。


「浜崎は何買うのか決めた?」


「んー純粋にスナックかなあ、お、これ新しい味あったんだ」


「おーほんとだ。なになにフィッシュアンドチップス味?味が想像できないな、ゲテモノ枠としては採用してみるか?」


「おもしろそうだけど俺は冒険しない趣味なんだ、だから鉄板の味にしとくよ。買うなら八葉が買ってくれ」


「は?浜崎お前のり塩派なのか?普通コンソメ味だろ?買うならコンソメにしておきな」


「八葉もわかってないな、顔は超一流なのに味蕾はド三流らしい」


「男なら黙ってコンソメだよなあ?」


「あ?」


「あ?」


「「はっはっはっはっは」」


突如始まった茶番だが、お互いに茶番なのは明確なためテンプレのようなやり取りを繰り広げる。一見しなくてもくだらないが自分からしては中々愉快である。

中学の時代でもあったがやっぱりこういうお約束というものは事の顛末はあらかたわかっていても楽しい。


「お前ら少し声小さくしてくれ、視線が集まるから少し恥ずかしいんだ」


そう話しかけてきたのは柳が持ち込むお菓子に対してゴミに関する懸念を表した男子だ。


名前は百瀬、先ほどといいどうやら規律を重んじるタイプのようだ。


「ごめん、少しはしゃぎすぎた」


「いや、そこまで言ったつもりじゃないんだ」


「いや、そうやって注意してくれるのはかなりありがたいよ。規律やモラルを重視する人は信頼できる」


「ありがとう、面と向かって言われるとかなり面映ゆい。」


「こっちもだ、改めてよろしく頼むよ。そういえば百瀬はお菓子やら決めたか?」


「ああ、適当に。お前らのはなんだ?スナック類をそんなに買ったって食べきれないだろ?」


「食べきれない分は開けずに持って帰れば問題ないだろ?」


「まあそれもそうか・・・ってフィッシュアンドチップス味?正気か!?割と前にでたやつだがそんなに評判はよくなかったはずだが・・・」


「いーのいーの、ゲテモノ枠があった方が面白いだろ?」


「それもそうだな、俺もそれを食べてみたくなってきた」


「お、いいねえ!浜崎は食う?」


「他人の金なら喜んで!冒険するのは自分の金じゃないときに限る」


「不道徳なやつめ、良心の呵責はないのか?」


いたずらな顔をする浜崎だがどうやら道徳は限定的になくしてしまったらしい


「ほら、早く買わないとすぐに日が暮れるぞ」


「はいはい、今行くよ」


先ほどのゲテモノ枠と適当なお菓子を詰め込み、レジに向かって足を早める


浜崎も決まったのかすぐに追いついてきた。他の面々はもう会計を済ませてしまったらしく出口の近くで待ってくれている。女子の一人と目があったため申し訳なさげに手を合わせる


その動作を見た女子こと島田さんは人差し指だけで円を描く動作をする。

どうやら急げと表したいらしい


待ってくれたクラスメイトの要望にうなずきつつ、それを叶えるべく列が短く荷物が少ないところを探し、並んだ















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