②白うさぎと黒猫――⑦


「まさか……こんなモンが、山中に仕掛けられてんのか……?」


 眉をしかめたアイが尋ねると、動物達はこぞって頷きました。どうやらモノクロ山にはイタズラ好きのやんちゃっ子が住んでいるようです。


「気を付けながら進んでくしかないねー……」


「だな。注意しねぇと」


 アイとヒスイは、辺りを見回しながら、山の奥へと足を進めます。

 巨大な落とし穴に続いて、トラバサミや虫捕り網。罠があるかもしれないと警戒しながら進んでみれば、なかなか気づきやすい仕掛けばかり。けれど、お陰で何度も遠回りをする羽目になりました。お目当ての林檎の木まではなかなか辿り着けません。


 いつの間にか歩くペースが数歩遅れているヒスイに、アイは振り向きました。


「なぁ、ちょっと休んでいいか? 朝からずっと歩き通しで、さすがに少し疲れてきた」


「……そうだねー……ノアの咳もちょっと落ち着いてきたし、ちょっとだけ休もっか……」


「決まりだな! あー、つっかれたぁ……」


 すぐ傍の大きな木に、アイは背中を預ける形で腰を下ろします。

 背中のノアを両手に抱え直して、ヒスイも隣に座りました。眠たそうなその顔には、横で肩のバッグを下ろす木こりの顔よりも、たくさんの汗が浮かんでいます。


 二人を労わるように、小鹿と子羊と鳥が、どこからか木の実や果物をたくさん持ってきてくれました。近くに泉でもあるのか、猿は大きな葉っぱに綺麗な水を貯めて持ってきてくれました。心優しい動物達を、アイは「ありがとうな」と順番に撫でてあげました。


「オレも弁当持ってきたから、これもみんなで分けて食おーぜ」


 アイはバッグの中から水筒とお弁当を取り出して、ヒスイや動物達と仲良く分け合います。いつもより量が少ないお昼ご飯は、とても温かくお腹の中に収まりました。

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