③教会のお手伝い――②
瞳を輝かせて駆け寄ってきたのは、アサギの友達のアカネでした。人懐っこい両手がアサギの手を掴みます。
「アカネも一緒に教会のお手伝いするのっ。いつも楽しいけど、アサギ君も一緒だったらもっと楽しいっ」
アサギの手を掴んだまま、アカネはぴょんぴょんと飛び跳ねます。彼女の髪の両サイドで揺れる、ピンクのリボン。その先で、シルバーのロザリオが眩しく光ります。毎朝のお祈りも誰よりも熱心なアカネはとっても信心深い子です。
アサギは顔を上げました。
視線の先にいるのは肖像画の聖母。二つの薄い瞳も、控えめに口角を上げる唇も、不思議といつもより優しく微笑みかけてきているような気がします。
「もちろん、私からもお礼はするわ。どうかしら、アサギ君?」
「……わかりました。僕も行きます」
あまり乗り気ではないけれど、友達と一緒なら少しは気が楽かもしれない。シスターの笑顔を曇らせたくないという想いも働いて、ぎこちないながらもアサギは承諾しました。
「だけど、僕からもお願いしたいことがあります」
「何かしら?」
「僕が教会に行くことは……家族には連絡しないでもらえますか?」
「もちろん。個人的なお願い事だもの。これくらいでお家の人に連絡したりしないわ」
不安がるアサギの頭を、シスターの温かい手が撫でます。ゆっくりと、何度も。
アサギはほんの少しだけ後悔しました。一つだけ、兄に秘密を抱えてしまうことを。
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