②白うさぎと黒猫――④
仕事を中断することにしたアイは、ヒスイを抱えてログハウスに帰りました。アサギは既に学校に出かけていました。
ヒスイと、ヒスイに背負われていた小さな子を横並びにベッドに寝かせると、小一時間ほど経った頃にヒスイが目を覚ましました。空に浮かぶ島で暮らすヒスイは、地上に下りてくる時も怪我をしないよう魔法で風を操るのだそうです。ただ、魔法を使うと体力が奪われとしまうためすぐに眠気に襲われるらしく、話を聞いていたアイは目を丸めました。
「なるほどな。この間ぶっ倒れてたのもそういうワケだったのか。魔法が使えるっつーのも、便利そうで意外と大変なんだな」
「不便なことしかないよー……無いものを一から作れるよーなすごい魔法は……僕は使えないしねー……」
「いやいや、風操れるだけで十分すげぇだろ。それより……風邪引いてるん……だよな? この子」
アイは、ヒスイの隣に寝かせている女の子に目を向けました。
人間の女の子のようにも見えますが、黒い髪からは黒い耳がひょっこりと顔を出しています。ベッドに寝かせる際、スカートの端から尻尾も見えました。どうやら人間と猫の混血の子どものようです。アイ達よりもずっと幼いその顔は真っ赤で、ゴホゴホと頻繁に咳を鳴らしています。
「病院に連れて行くつもりなのか?」
「そんなわけないじゃん……僕もノアも、人間なんか嫌いだもん……」
「そうかよ。そりゃ悪かったな。人間が出しゃばって」
「…………着てくれたんだ。これ……」
ベッドの上で上半身だけを起こしたヒスイは、アイの着ているケープに手を伸ばしました。しっかりと縫製された光沢のあるケープは、前にヒスイがこのログハウスで夕食をご馳走になった翌日、お礼と称してアイに贈ったものです。ヒスイが今着ているものと、サイズだけが違うもの。
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