②白うさぎと黒猫――③

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 太陽が高い、気持ちの良い朝です。

 いつも通り、アイはお仕事をするためにアオイ森をうろついてました。腰には斧を携え、肩から掛けたバッグにはアサギが作ってくれたお弁当と水筒を詰めて。


 アオイ森に生える木は不思議なもので、どんなにって丸太に変えても、翌日には大木に戻っているのです。その異常なまでの成長の速さに、アイ達の生活も支えられています。


「よし。今日はこの辺りの木を……ん?」


 仕事を始めようと足を止めたアイは、キョロキョロと辺りを見回しました。どこからか、人の声のようなものが聞こえてくるのです。


「…………てー……」


「ん……? 上か?」


「危ないよー……避けて―……」


「……っうわぁぁっ‼」


 手を広げて上空から降ってくる人影。アイがその姿を認識できたのは、人影が自分めがけて落ちてくる寸前のタイミング。当然避けられるわけもなく、アイは下敷きになってしまいました。


「っいってぇっ……! っとにっ、叫ぶのおせぇんだよ! ヒスイ‼」


「ごめーん……でも……僕のこと、覚えてたんだねー……アイ……」


「当たり前だろ。そんなすぐ忘れるか……じゃねぇっ、今すぐ降りろっ‼」


 自分に乗っかるヒスイを引っぺがし、アイは素早く起き上がろうとしますが、すぐに理由ワケ有りだと察しました。アイとは比べ物にならないその小さな体には、ぐるぐると太い紐が巻きついているのです。


「おんぶ紐? 何か背負ってんのか?」


「あー……この子、僕のお城に住んでる……猫ちゃん、で…………」


 話しながら、ヒスイは頭をフラフラさせています。そのタレ目を守ろうとするかのように、目蓋はもう、閉じる寸前。


「オマエ、まさかまた……」


「だめ……やっぱ、ねむ……」


「ヒスイ!」


 ヒスイが倒れ込む前に、アイは慌てて腕を伸ばして受け止めました。

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