①魔王と出逢ってしまった木こり――⑪

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「まおーさまっ‼」


 ふらつく足でヒスイが城に戻ると、黒猫のノアが飛びついてきました。猫と言っても、人間との混血なので、人間の女の子に猫の耳と尻尾が生えたような姿をしています。寂しがりなノアは、ヒスイが帰ってくると、いつもこうして胸に飛び込んできます。


「まおーさま、おかえりなさいっ」


「ただいま……いい子にしてたー?」


「うんっ。でも、まおーさまがいないあいだに、おきゃくさまきたっ。きゃくまにいるっ」


「ん……その前に、ノアを寝かしつけてあげなきゃねー……」


「こもりうた、うたってっ!」


「はいはい……」


 ノアの長い黒髪を撫でながら、ヒスイはノアを部屋まで連れていきます。

 特製の林檎型のベッド。ふかふかのシーツに寝かせ、ヒスイが子守歌を歌ってあげると、ノアは素直に眠りに落ちました。


 健やかな寝息を立てるノアの耳を撫でてから、ヒスイは客間へと向かいました。もう帰っていればいいのにと、心の片隅で願いながら。


 しかし叶いませんでした。客間のソファーには、黒いローブの上にシルバーのロザリオを掲げた、トパーズの瞳の男が座っていました。寛いだままの表情で、男はヒスイに微笑みかけます。


「こんばんは。魔王様」


「こんばんは……神父様」


「今夜も“裁き”のお願いにあがりました。己の罪を自覚できるよう、教会の庭にはりつけにしてあります」


 男の首からぶら下がる純銀のロザリオ。下部より上部の長さが目立つそれは、まるで逆さまに吊るされているかのよう。

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