〜本章#16〜

「仁美と話がしたい。一つになりたいんだ。」

 男がそう言うと、仁美に向かって近づいてきた。口裂け女が手を上げて、見えない力で男の自由を奪った。信じられないが、男はその力に抵抗していた。無理やり動こうとすると、骨の折れる音が聞こえた。男は体中の骨を砕き、また再生しながら進んできた。

「私ならあんたの家族に一生楽な暮らしをさせることだってできる。それであんたが心置きなく成仏できるなら……」

 花子さんが男の前に立ちはだかる。男は止まらなかった。

「化け物はひっこんでろ!」

 男はありえない角度に顔をゆがませながらそう言った。花子さんがまた手を叩く。男は潰れなかった。

 仁美が前に出た。和樹が慌てて後に続いた。他の仲間は動かなかったが、花子さんだけは僕のほうに急いで飛んできた。あのかるたを取り出して僕に差し出した。その手は怒りと焦りで震えていた。僕はかるたを受け取って、「大丈夫だよ。」と言った。

「さっさとくたばれ!」

 仁美が男を殴った。

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