〜本章#14〜

 いつの間にか花子さんの体の周りを光の球体が浮遊していた。見覚えがあるものだった。それは花子さんに何か囁かれた後、僕の体の中に入ってきた。

「ヒーリング、それだそれだ……」

 僕は思い出したように呟いた。

「体に入って喧嘩すれば乗っ取り、仲よくすれば共有……」

 花子さんの声を聞きながら僕は意識が遠くなっていくのを感じた。

 乗っ取りは一瞬で終わった。目が覚めた時、双子がそこにいた。2人は僕の手を片方ずつ握りしめていた。仁美は僕を抱きしめ、和樹は僕の体を何度も叩きながら、嬉しそうに僕を糞呼ばわりした。3階の廊下にいる。戻ってこれたのだとわかった。

 何やら屋上が騒がしかった。階段をアバターの1人が登っていくのが見えた。腕に体育館で使うような大きな照明器具を抱いていた。

「早くしないと遅れるよ! 決闘だ!」

 その子が言った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る