〜本章#13〜

 花子さんが話を終えた頃、男が壁の黒い穴に入っていくのが見えた。

「お前の体をもらう……」

 男はまた不気味な笑みを浮かべていた。

「翔待って!」

 花子さんが焦る僕を呼び止めた。いつ現実世界に戻っても、男が僕の体から目覚めた直後になるとの事だった。花子さんは乗っ取りをするべきだと言った。そしてその方法を教えてもらった。

 出発前、花子さんはワンピースのどこかから何かを取り出した。それから、黒いガラス玉を念力のようなもので浮かせて、今、手に持っているものに吸収させた。

「本当の花子。」

 花子さんはそう言って、僕に手の中の物を見せた。それは『お』と書かれたかるただった。金棒を持った鬼に、本当の花子が追いかけられている絵札だった。

「あの男が読んでいた本が気に食わなかった。たったそれだけ。それで、男を破滅させようと、関係ない美紀に鬼を押し付け利用した。もともと鬼の力を手放したかったってのもあるけど……直接自分でタッチしなかったのは、男が嫌いだから。自分勝手でしょ、このくそ女。そんな事より、この階段に来てすぐにあいつに会ったことにしてあげる。共有すればできる。記憶の消去。セーブデータのリセットができる子は……」

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