〜本章#12〜

「乗っ取りだ……」

 僕の声に花子さんが反応した。嬉しそうに僕に向かって飛びついた。怒りが一瞬で消えるを感じた。花子さんが大きくくしゃみをして、口から小さな球体を吐き出した。それはガラス玉で黒い火をまとっていた。

「トイレ行ったのに手、洗ってないでしょ?」

 花子さんが僕を放して、笑いながら言った。

「これは本物の幽霊の体。翔のおかげで私、本物の幽霊になれた。」

「本物の幽霊……でも僕が作り出した花子さんだ。美紀の花子さんとは違う存在でしょ?」

「あんたらバカ兄妹、四六時中一緒にいたじゃない。考えてることも、思い出もおんなじ。だから、美紀が作っても、あんたが作っても同じよ。」

 それを聞いてとても嬉しくなった。思わず、花子さんの手を握ってしまった。はっとしたが、何の変化もなかった。鬼の力は既にあの球体に閉じ込められたようだった。鬼ごっこは終わったのだ。

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