〜本章#10〜

「にらめっこしましょ、笑ったら負けよ……」

 本当の花子が男に向かってそう言い、それから壁に触ると黒い穴が開いた。どうやら出口のようだった。入口は僕たちみたいな人間にしか入れなかったから、この状況を待っていたと、花子が言った。

 男を勝たせるわけにはいかない。僕はポケットから写真と新聞の切れ端を出した。

 新聞には『被疑者自首後急死』と書いてあった。

 写真をしまって、新聞を丸めて男に投げた。新聞は不自然に飛んで花子の手に収まった。

 男にそれを差し出した。男は立ち上がって新聞を読むと愕然として、倒れ込むように膝をついた。

「戻る体がなくなった。」と言い、その顔はゆっくりとこっちを向いて……にこっと笑った。また泣き顔に戻してから花子のほうを見て、新聞を悔しそうに破り捨てた。

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