〜本章#9〜

 それはあまりにも突然だった。階段に腰かけている男がいた。スーツ姿の男だ。驚いて僕を見ている顔がとても怖かった。

男は逃げ出した。階段を登っていく。追いかけながら、待て、と言おうとしたが、声が出なかった。喋り方がわからなくなったかのようだ。何とか出たのは叫び声だった。

 階段を登りながら目線を上げる。男が踊り場で倒れながら後ずさりをしていた。その先にもう1人いる。僕がいた。立って歩いていた。僕が叫んだから生まれたおばけだとわかった。

 その後すぐに異変が起きた。おばけの体が宙に浮いて一瞬強く光を放った。赤い靴が、カンっと音を立てて床に着地するのがわかった。おばけは小学校低学年くらいの女の子の姿に変わっていた。白いワイシャツとサスペンダー付きの赤いスカートを着たおかっぱ頭の女の子、噂通りの花子さんがそこにいた。

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