〜本章#8〜

 体が階段にゆっくりと沈んでいった。下に向こうの世界があると感じた。体が半分ほど沈んだところで僕に対する重力が上下逆になった。

 下りだった階段は上り、上りは下りにという変更はあったが、さっきと同じ学校の階段がそこにあった。仁美と和樹の姿や僕の死体は見当たらない。

 体の自由が利くようになって、立ち上がるとおかしなことに気づいた。上も下も無限に階段だけが続いていたのだ。

 何年も経った。いや何十年も経っていた。発狂しそうだけど、もしそんなことになったら、存在を維持できなくなる。そう思って僕は静かに耐えていた。あの部屋のテレビで、男がたった数週間を千年と言っていた事も忘れていなかった。

 僕の存在理由は1つだけだった。あの男を見つける事だ。

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