〜本章#7〜

 いつの間にか、布団の上にとても大きな黒いビニール袋があった。中はパンパンに詰まっていて、周りをロープでグルグル巻きにされ、口もきつく縛られていた。隙間なく密閉されているように見えたが、それでも死体の臭いがした。

 囁くような声が中から聞こえる。

「花子さん助けて、口裂け女助けて、人体模型助けて……」

 美紀が順番にこの廃校にいる者たちに助けを求めていた。計30人くらいを呼んだ後で、美紀が悲鳴を上げた。恐ろしい叫び声だった。

 僕はビニール袋をつかんだ。ロープが邪魔だったが、何とかいろんな方向に引っ張って、美紀の顔がありそうな所にこぶしくらいの穴を開けることができた。

「美紀、美紀……」

 僕はその穴を覗きながら言った。何の反応もない。中は真っ暗だった。

「一緒に帰ろう……」

 僕が手を差し出すと、中から小さな手が出てきた。爪で引っ掻いたような傷が無数についていた。

 手に触れると、その瞬間から頭の中で誰かが何かを話し出した。

美紀は消えていた。部屋を出て、トイレからも出た。和樹と仁美が待っていたが、僕は怒鳴って2人を遠ざけた。

 僕は焦りながら廊下を早歩きで進んだ。後ろから2人がついてくるのがわかった。

 屋上へと続く階段を登り、途中折り返し部分の踊り場を進んでいた時、仁美が叫ぶ声が聞こえた。階段の下で何かあったらしい。仁美と和樹が立っていて、もう1人倒れている子がいる。それは……僕だった。

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