〜本章#5〜

 右から3番目の個室をノックして、ドアを開けると、そこには花子さんが言った通りの空間が広がっていた。照明が点いている。窓の外は何も見えない程の暗闇だった。

「美紀……」

 返事はなかった。気配もない。ベッドの下を覗くと、美紀が失くしていたかるたの赤い裏面が見えた。

 勝手に部屋の隅にあったテレビが点いた。そこから美紀の声が聞こえてきた。

 テレビには教室の映像が映っていて、そこに美紀が出てきた。僕の声には反応しない。ビデオレターのようだった。

「兄ちゃん……遅過ぎ! 私さっさと鬼代わってこんなとこいなくなりたいの。わーかーる? 私はタッチすればそれで終わりだけど。でもその後兄ちゃんどうすんの? 考えてなかったでしょ? いい? タッチしたらその後は花子……」

 映像が急に止まった。鬼を代わったら、花子さんは消えているはずだ。美紀の最後の言葉はおかしいと思った。画面が消えて、また別の場面が移った。

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