〜本章#3〜

 口裂け女は復活し、男の頭に暫定鋏を突き刺した。男はどんよりとした光を放ち出した。

「どうして? 私は復活できても、生身の人間は乗っ取られたらそこで終わり……あんた死にたいの? 死にたいのかって!」

 口裂け女の問いかけに、仁美は必死に首を振った。

「死にたくないならどうして悪霊に同情なんてするの? こいつがあんたを欲しがるのは、あんたがこいつに同情してるからよ……光が消えたら、次叫びが上がる前に3階に登らないと、あの男は仁美、あんたの体の中で復活するよ。3階にいるあの子なら、私のようにはならないし、復活する時だってそばにいれば男を遠ざけてくれるはず……乗っ取りと誓い。それだけ注意すればいいんだけど……仁美、こっちにおいで。」

 和樹は口裂け女から仁美を遠ざけようとしていたが、驚いた事に仁美は自分から、呼びかけに応え、口裂け女に近づいていった。

「美紀ちゃんは3階にいるの?」

 仁美が聞くと口裂け女は頷いた。

「鬼でなくなると、美紀ちゃんは消えちゃうの?」

 口裂け女はまた頷く。

「あなたも?」

 口裂け女は驚いた表情をした。でもすぐに笑って頷いた。「私も消える。」と言って。

「あの男をかわいそうだなんて思わないで。」

 口裂け女は仁美の手を取って優しく握った。仁美は自信なさそうに頷いていた。

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