〜本章#1〜

――1階。

 僕たちは身長3メートル程のこの世のものではない存在に会った。それはボロボロのウェディングドレスを着た人体模型で、手のひらと足の裏から、骸骨の標本の腕と脚が生えてきていた。顔の右半分、筋肉が剥き出している側からも頭蓋骨が丸々1つ飛び出てきている。

 そいつの腹部には本物の臓器があって、それは人の顔の形をし、言葉を発した。

「失敗だ、体がほしい。その子の体がほしい、仁美、仁美こっちにおいで。」

 仁美はそいつに捕まったが、遠くの方で誰かの叫び声が聞こえた時、そいつは急に大人しくなって仁美を放した。

 骸骨と人体模型の顔が動き、それぞれが喋っていた。

「私たちは敵ではない。」

 人体模型がそう言った。和樹がその言葉を信じて近づいていった。2人からこの鬼ごっこのルールを説明され、2階に行くように指示を受けた。

「もう大丈夫だから。」

「早く行きなさい!」

 骸骨男と人体模型が言った。和樹と一緒に仁美を支えながら階段を上る時、1階で肉が何度も刺されたり、もぎ取られたりする音が聞こえた。何が起きているのかは考えないようにした。とにかく僕たちは先に進むことができたのだ。

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