第一章
第11話 国都レルラン
国都レルラン。
都というだけあって人の数と活気はルーグ村とは桁違いだった。
わたしは馬車から降りて駅についてすぐペンデュラムの紐を持ち、吊り下げてみた。
しかし、ピクリともしない。残念ながらこの近くに転生者はいないようだ。
ペンデュラムをまた首にかけ直すと、わたしはまず宿を探して歩き始めた。
少なくともウォルフが所属しているであろう冒険者ギルドか何かを探すにしても、まず生活の基盤を固めなくては。
ミアの家に居候させてもらっていた頃とは違うのだ。
やがて「INN」と書かれた看板を見つける。
とりあえず今日はこの宿で一泊しよう。
「いらっしゃいませ、お泊りですか?」
中年くらいの歳の宿の女将がドアをくぐるなりそう言ってきてくれた。
「明日の朝まで。おいくらかしら?」
「銅貨七枚よ。夕食朝食付きなら十枚」
「じゃあ十枚で」
ルーグ村で用意した保存食は食べきっていたので、食事付きにする。
「毎度あり。気に入ったら明日も泊りに来てね」
「あの、この街に冒険者ギルドってありますか?」
「あら、お客さん冒険者の人だったの? そりゃ大通りに行けばいくらでもあるわよ」
「明日の朝、大通りへの行き方を訊いてもいいです?」
どうやら馬車を降りた通りは国都の大通りではなかったらしい。
「いいわよ、おのぼりさんみたいだから簡単な地図を書いてあげる」
よかった。ルーグ村の人たち同様、この都の人も親切だ。
部屋に通され、食事して、風呂に入ったときに、一緒にミアがいないことに寂しさを覚えた。
ベッドに入ったときにも、ミアの不在を思うとまた涙がこぼれそうになる。
寝ている間にいつの間にかわたしを抱き締めていたミア。
いつも笑顔でわたしが魔法を使うたびに嬉しそうに感謝してくれたミア。
失いたくなかった。なればこそわたしは、ウォルフを、転生者を許せない。
できればウォルフ以外の転生者にも会ってみたい。
すべての転生者があんな考え方をしているのでなければわたしはどうすればいいのだろう。
『あれ? 僕なんかやっちゃいました?』
ミアを殺された時のあっけらかんとしたウォルフのセリフが心の中に蘇る。
奴のことを思い出すたび、わたしの中にはドス黒い感情が沸き上がる。
馬車の荷台はやはり寝心地が悪かったのか、復讐心に駆られたまま、わたしはすぐ眠りについた。
翌日、女将さんが書いてくれた地図を頼りに大通りに着く。
やはりペンデュラムは反応しないままだ。
冒険者ギルドを探すと、すぐに見つかった。
他の店とは比べ物にならないほど多くの人でごった返しており、津々浦々のファンタジー世界のようにやっぱりたくさんの冒険者がいるようだ。
路銀を稼ぐためにもとりあえず冒険者登録はしておいた方がよさそうである。
受付のお姉さんと二言三言交わすと、「まず適正試練のためにこの三つの革袋にゴブリンの首を入れて持って帰ってきてください」なんて課題を出される。
なんでも革袋には魔法がかかっており、他人にゴブリンを倒してもらってもバレてしまうらしい。
「あの~? ゴブリンってどの辺に住んでるんですか?」
「それを探すのも課題の一つよ。最近冒険者志望者が増えてゴブリンも警戒してるからうまく探してね」
ゴブリンなんてきっと雑魚モンスターなんだから、わたしなら簡単に倒せるんだろうが、どこにいるか分からないのは結構きつい。
「ゴブリンは暗くてじめじめしたところが好きだから、洞窟とかを探してみるのがいいんじゃないかしら」
受付のお姉さんは親切にもアドバイスをくれる。
ド〇クエならまずスライムを倒すように、この世界での最初の敵はゴブリンらしい。
相手がモンスターなら平気で首くらい切り落とせる覚悟がないと冒険者にはなれないと、そういう世界か。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます