#憧れの人がバックヤードに連れていかれました

『椅子の座面に手を置いて、その腕に股間を擦り付けてる!ばれない様に、スカートの上からw』


『吐息がだんだんバレるレベルに大きくなってきた。いや、大きくはないけど気付く人は気づくね。のあちゃんの周りのサラリーマンや学生も気にし始めてるw』


『左手で胸触り始めた!いや、一瞬だったw無意識にいっちゃったのか~。どエロ過ぎん?顔真っ赤になっちゃった』


『いよいよイキそうな顔じゃない?店で?マジで?夢中になってるけどw』


 片桐から興奮したような、バカにしたような実況が届き続ける。

 どれくらい真実かは分からないが、いよいよ長瀬のあが限界を迎えそうな様子が伝わってきた。


(中田はまだ来ないのか……)


 無駄な事を考える。

 来たとしても、それこそ中田が長瀬のあをホテルに連れ込むチャンスだと判断してしまうかもしれない。

 中田と店長、どっちがマシかなんて無意味な疑問だ。


(いや……長瀬のあ的には、ヒーローだと信じてる中田の方に、ホテルに誘われた方がいいのか)


 ストーカーに命令されて店内で自慰をし、トロンとした表情の長瀬のあが思い浮かぶ。

 煽情的で、蠱惑的で、魅力的で、淫靡的な。


(………っ……おちつけ…)


 息がうまく吸えない。立ち上がって逃げ出す事も出来ない。

 たぶん不審者みたいに、片桐からのメッセージを待ち続けていた。


『ハゲたデブの店長っぽい人が、のあちゃんの周りうろうろし始めたw店にバレテるってw』

「っ!?」


 既に店長が頃合いを見計らっているのか。

 いや単純に自慰に更ける長瀬のあを見て、自分も興奮しているのだろうか。


「ぁ……」


 情けない声が出た。

 片桐からさらに、メッセージと写真が届いた。


 頭がぼやけて、何が書いてあったのか分からない。

 だが顔を真っ赤にして、ポウっとした表情で俯く長瀬のあの写真が送られてきた。


 事後の……想像の中の長瀬のあの顔とリンクする。

 彼女の喘ぎ声や体温が腕の中に感じるようで、ゾクゾクと肌を毟られる様だ。


 ストーカーにオナニーを命じられて、こんなにも絶頂してしまった長瀬のあ。

 もともと人に見られると興奮する性癖が、隠されていたのかも知れない。


 ――次の写真には店長に肩を抱かれ、バックヤードに連れられていく長瀬のあの姿が映し出されていた。

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