#憧れの人が痴〇されています
「八条河原駅までお願いします!」
その辺を走っていたタクシーに飛び乗り、行く先を告げる。
運転手は学生かよと言う雰囲気だったが、急いでいる空気を感じ取ったらしい。特に何も言わず、発車してくれた。
(間に合ってくれ……)
長瀬のあを痴漢している奴らの写真が、また片桐から送られて来る。
思った通り、中田の手下たち4人だ。
どういうつもりかは分からないが、長瀬のあのお尻を触ったり、スカートを捲ったりしている。
痴漢を楽しんでいるというよりも、長瀬のあをいたぶっている印象を受けた。
(ヤル気かよ?)
あいつらは先を想像できないバカな連中だ。
痴漢をして捕まれば、将来が台無しになることぐらい誰でもわかる。
しかしアイツラは中田に従って、美味しい想いさえできればそれでいいという奴ら。
自分達がどんなリスクを冒しているのか分かっていない。
だからこそ、めちゃめちゃな事でもやりやがる。
片桐には俺の知り合いだから、放っておけと連絡した。
正直言えば片桐に痴漢を止めて欲しい。が、そんな事をすれば片桐が病院送りにされかねない。
関わってはいけない人種なんだ。
何でそんな奴らが長瀬のあを痴漢している?
中田に命令されたに決まっている。もしくは我慢できなくなって、勝手に長瀬のあを襲いに行ったか。
なんで長瀬のあの場所が分かった?
俺がバカみたいに、盗撮写真を中田に渡していたからだ。
画像には長瀬のあの制服も、乗っている電車も家の外観まで写っている。
通学路を特定することぐらい、バカなアイツラでもできるだろう。
「痴漢だけで済めばいいけど……」
痴漢に遭って体を触られれば、どんな子だって怖いだろう。辛いだろう。
今後電車に乗るのが、嫌になってしまうかもしれない。
けどアイツラが体に触るくらいで止めるなら、感謝してもいいくらいだ。
あいつらが電車で女性をターゲットにするという事は……
「う……」
スカートを切られてパンツ姿の長瀬のあの写真が、片桐から送られて来る。
次の写真では制服のボタンを破られ、ブラが衆目に晒されている。
この様子だと、長瀬のあを4人の体で隠して、好き放題やっているらしい。
周りの何人かくらいは気づいてはいるだろうが、ガラの悪い男4人に突っかかれる奴もいないだろう。
長瀬のあは縮こまり、体を隠す事だけに必死になってしまっているようだ。
いつもの手口だと思い知らされ、心臓が切り刻まれる。
奴らは電車で女の子を下着姿にし、お決まりの駅で下ろさせる。
そこはホームが広いものの利用者は少なく、高架の上にあるので駅の外の人に見られる心配もない。
下着姿で逃げられない女の子を、駅の端の誰も使っていない汚い男子トイレに連れ込むのだ。
その後は……言うまでもないだろう。
ガタイのいい男が4人囲んでいるのだ。そこまで連れ込まれたおとなしい子が、今更逃げられる筈もない。
怯えて何も出来ない女の子相手に、奴らは飽きるまでやりたい放題だ。
「く……」
男子トイレで襲われる長瀬のあを想像したら、ビクリと体が震えた。
心臓を雷に打たれたみたいで、頭の中がぐらぐらと湯立つ。
(俺の心配し過ぎであってくれ……)
心の中で祈りながら、奴らの犯行現場に使われる駅へと向かう。
もちろん焦っても車が早くなるわけがない。
スマホを両手で握りしめ、片桐から送られて来る画像を開き続ける。
痴漢されている長瀬のあの姿を、ただただ見続けることしかできなかった。
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