迷子になったら女神と出会った
俺は今日、王立学園に入学することになり、校門前で少し絡まれる程度の些細なことはあったものの、特に問題なく王立学園の中に入った。
その上で断言したい。
「迷子になった」
と。
「さて、困ったな。周りには部屋がいっぱいあれど、誰もいないし、大体広すぎるんよ。こんなよく分からない地図一枚で目的地まで辿り着けるわけがないやろ。どうしようか・・・・・・・あ、そうだ、空間魔法を使って、ここら一帯の全てを把握して適当に人のいるところまで向かいますか」
「そうと決まれば、すぐ行動、空間魔法・空間把握・・・お、いましたね。すぐ近くにかなり強大な魔力を持った存在とそこそこの力を持った存在が複数名。ここに向かうか。空間魔法・空間転移」
―――――――――――――――
転移した瞬間に俺は膝から崩れ落ちた。
何故なら目の前に女神がいたからだ。
時が止まるというのはこの時に使う言葉だと俺は確信できた。
今まで見たどんな人よりも美しい少女であった。いや、美しさの中に可愛らしさも備えている完璧な美少女であった。
スラリと腰まで届く白色の美しい髪、窓から入る光に照らされて、何処か銀色の様にも感じる。
黒みがかった紫紺の瞳はどんな宝石よりも美しく、目が合っただけでありとあらゆる全ての種族を魅了する力すら感じてしまう。
何処か物憂げなその面差しには、俺の全てを賭してでも守ってあげたいと思わせる力があった。
その顔には何処となく感じる幼さと艶と、高貴さが同郷していて、何処かの国の大切に育てられてきたお姫様という言葉がしっくりと来た。
胸は大きすぎ小さすぎず、体の全てが完璧に調和のとれた黄金比という言葉がしっくりと来た。
俺は王立学園に来ていたこととか、今から学園生活を満喫するだとか、そういうのを全て忘れてしまっていた。
そして理解した。
理解させられた。
嗚呼、これが一目惚れって奴なんだ。
と。
そして、俺は気が付いたら、女神様の前で膝まずき頭を下げて叫んでいた。
「ひ、一目惚れです。わ、私とつ、付き合ってください」
と。
自分でも馬鹿だと思う。
女神様からしてみれば、俺はいきなり、転移してきたよく分からない人だ。
喋ったこともなければろくに俺の顔すら見ていない。
そんなよく分からない奴がいきなり付き合ってくださいと告白をしてきた。
100%振られるというのが理解出来た。
でも俺は告白をせずにはいられなかったのだ。
「ええ。もちろん。喜んで」
「え?いいのですか」
オッケーが出た。
女神様は嬉しそうに私に笑顔を見せてくれる。
女神様の可愛らしい八重歯が見えた。それがまた何とも俺の心をくすぐった。
「いや~~~~~~~~~~~~しゃああああああああ。女神様、この私、殺戮魔帝の全てを賭して、女神様を守ることを誓います。女神様がこの国の全てを殺せと命じれば全てを殺戮します。女神様が魔王を殺せと言うのならば魔王を殺戮します。女神様が全てが欲しいというのならば全てを殺戮してでも全てを渡しましょう。女神様が世界で最も幸せいられるように最大限の努力をします」
俺は女神様の告白オッケーを受けて嬉しさの余り、絶叫し、そして敬礼をして宣言をしてしまっていた。
それほど嬉しかったのだ。
俺は女神様の為ならば本当に何でもするつもりであったし、何でもできる自信があった。
「女神様じゃないわ。私の名前はイトよ。これからは私のことは女神様じゃなくてイトって呼んでちょうだい。だって、そのこ、恋人なんだから」
少し恥ずかしがっていのか、ちょっともごもごってなっている。
「可愛い」
素直にそう声が漏れていた。
「イト、分かったよ。イト。これからよろしくお願いします」
「そんな、敬語なんて使わないで、だって私達は恋人なのよ」
「ああ。そうだな、よろしくイト」
「ええ。こちらそこよろしく」
かくして俺は一目惚れした女神、いや、イトと恋人になった。
「ちょっと、待って、貴方一体誰なのよ。それが何なのか分かってるの、あの憎き魔王の娘よ」
さっきまでイトと会話していたであろう、老婆が俺に怒鳴ってきた。
「ん?え、魔王の娘?」
「ええ。そうよ。私の名前はイト、だけど本当の名前はイト・サタン・ベルゴフュード。今代の魔王の血を引く、れっきとした魔王の娘よ」
堂々と名乗りをあげるイト。
その姿は正に魔王の娘という言葉がぴったりと当てはまる程、威厳に満ち溢れ、それでいて可愛らしさがあった。
「え?、ええええええええええええええええ」
悲報・俺、戦時中に魔王は殺してないけど魔王の側近やら魔王の息子やら娘やめちゃくちゃ殺しまくってんだけど。
あれ、付き合ってまだ数分だけど、これ・・・ヤバくね?
どうしよう。
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