第2章

第4話

七瀬さんが退院したのは僕がお見舞いに行ってから一週間後のことだった。退院後の七瀬さんは学校でも入院前と変わらずクラスメイトと話していた。





「ねえ、なんで図書室に七瀬さんがいるの?玲奈さん達と帰らないの?」

「なんでって図書委員だからに決まってるじゃん。玲奈達には図書委員の仕事があるってことで先に帰ってもらったよー」


七瀬さんは棚に並んでいる本を見ながら答える。


「咲人くんは毎日こんなことしてるの?私には難しいや」

「ならなんで図書委員になったのさ。本見てないで少しは手伝ってよ」

「えっとそれはねー、死ぬまでにやりたい事

を伝える時に図書委員になったほうが咲く人くん探さなくていいし、一回やってみたかったんだよねー、図書委員」


七瀬さんはそう答えると、ニコッと笑って本の整理を始めた。


「やっと終わったー」

「お疲れ様」


二時間ほどで図書委員の仕事が終わって、帰る頃には外も少し暗くなっていた。


「ねえ、咲人くんってこれから用事あったりする?」

「ないけど僕はまっすぐ家に帰るよ」

「ならさ、一緒に帰ろうよ!ついでに今度のやりたい事ノートの予定も伝えたいし」

「それくらいメールで伝えれるでしょ。僕はあんまり目立ちたくないんだよ。それじゃ、先に帰るね」


七瀬さんと一緒に帰ると、遊園地の時みたいにクラスでまた目立つことになる。僕はそんなのごめんなので、さっさと鞄を持って図書室を出ようとした。でも七瀬さんはそれを許してくれなかった。


「ふーん、咲人くんは暗い夜のなか女の子を一人で帰らせるんだー。ふーん、そうなんだー」

「わかったよ、一緒に帰ればいいんでしょ」


僕は結局七瀬さんの脅しにのせられ一緒に帰ることになった。


「それでね、今度行きたい所なんだけどね」

「ちょっと待って!」

「ん?どうしたの?」

「この話はせめてクラスの人がいなくなってからにしてくれないかな」


一緒に帰ることはいいとしても、まだ学校にのこっている人達の前で容赦なく話しかけてくるのは勘弁してほしい。しかも、次にやる死ぬまでにやりたい事の行くところだなんて、クラスの人にでも聞かれたら最悪だ。


「それでね、今度行きたい場所なんだけどね」


七瀬さんは校門を出て、人が少ない場所に入った瞬間にまた話し始めた。

なんで七瀬さんは僕が目立つようなことをするんだろうか。僕はただクラスで目立たないで、それなりに楽しい学校生活を過ごしたいのに。


「───くん、──くん、咲人くん、聞いてるの?」

「あっ、ごめん、ちゃんと聞いてたよ」

「本当かなー?じゃあ、今度行きたい場所は?」

「それはー、、、、、」


もちろん考えごとをしていて聞いていなかったから分かるはずがない。だから、そっと七瀬さんから目をそらした。


「ほら、聞いてないじゃん!」

「ごめん!」


僕は七瀬さんが拗ねたりする前に謝って、次に行く場所を聞こうとした。


「それで、どこに行くの?」

「話を聞いていない咲人くんには教えてあげませーん。当日まで秘密でーす」


七瀬さんは結局、拗ねたようにして行く場所を教えてくれなかった。


「あっ、咲人くん前にバイクの免許持ってるって言ってたよね」

「うん、持ってるけど。それがどうかしたの?」


七瀬さんは、何かを思いだしたかのように話し始めたかと思えば、なんでバイクなんだろう。


「良かった。なら、当日はバイクで来るように」

「うん、わかったけど、なんでバイク?」

「それはね、ちょっと遠い所に行くからだよ」


結局、行き場所を教えてくれることはなく七瀬さんとわかれた。

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