第3話

月曜日。

朝いつも通り学校に行って、いつものように教室で友達が来るまで本を読んでいると七瀬さんの友人の1人の佐藤玲奈さんに呼び出された。


「ねえ、これどういうこと?」


それと同時に見せられた写真は土曜日に七瀬さんと一緒に遊園地に行った時の写真だった。


「なんであんたと美春と一緒に遊園地に入ってるのよ。しかも今日美春休んでるし。あんたもしかして美春に変な事したんじゃないでしょうね。」


めんどくさいことになったな。こうなることは少しは予想していたが、別に僕は七瀬さんに変なことはしてないし迷惑しているのはどちらかというと僕の方だ。


「僕がそんな事するわけないでしょ。ただ七瀬さんとはいろいろあって一緒に行っただけで、別に変な関係じゃないよ。それじゃ、僕は教室に戻るから。」

「ちょっ、、待ちなさいよ。」


僕はこれ以上は玲奈さんに用事はないので教室に戻った。教室に戻ると、僕が七瀬さんと一緒に遊園地に行った事はもう出回ってるみたいでクラスのいろんな所で噂されていた。でも仲良くしようともしない人に言われても気にしないのでどうでもよかった。

結局はその日は一日中、周りからは変な目で見られながら過ごすことになった。


 家に帰ってベットの上に寝っ転がって七瀬さんの病気の事を考えてると、昔お婆ちゃんがこの世界にはなんでも願いが叶えることのできる店があるって言っていたのを思い出した。

もし僕がそこで七瀬さんの病気を治して欲しいと願ったら叶えてもらえるだろうか。

そんなことを考えていたら携帯のアラームが鳴った。七瀬さんからだ。


「もしもし咲人くん?今大丈夫?」

「さっき学校から家に帰って来たところだよ。」

「ならちょうど良かったね。」

「急に何の用事?もしかして、またやりたい事があるの?」

「ううん、今日は違うよ。今日はちょっと謝りたいことがあってね。」

「謝りたいこと?」


なんのことだろう?七瀬さんに謝れることをした覚えが全くないんだけどな。


「うん。今日玲奈からメールがきて、咲人くんが私になんかしたんじゃないかって心配してたから、咲人くん今日学校で大変だったかなって思って。」

「確かに大変だったけど、別に慣れてるから大丈夫だよ。」

「とりあえずごめんね。玲奈にはちゃんとただの友達って言っておいたから。」

「そっか、ありがとう。そういえば、なんで今日やすんだのさ。」

「あー、それなんだけどね。実は、検査入院することになって一週間くらい学校休むことになったんだ。」

「そうなんだ。」

「わはは、相変わらず反応薄いねー。」

「それで玲奈さんには入院のことなんて言ってるの?」

「えっと、普通に疲れで体調を崩したからしばらくの間入院するって言ってあるよ。」


そうなると玲奈さんは僕のせいで七瀬さんが体調を崩したとか言ってよけいにめんどくさくなりそうだけど。


「そうなんだね。それで身体のほうは大丈夫なの?」

「うん、全然大丈夫だよ。この調子なら余裕で来週には退院できるよ。」

「そっか、‘それなら良かったよ。」

「まあ、そういうことだから心配はいらないからね。それじゃ、また学校でね。」


七瀬さんはそう言って通話を切った。

通話が終わると僕は、またベットに横になった。七瀬さんは本当にただの検査入院なんだろうか。僕にはあの言葉が嘘のように聞こえた。本当は心臓に何か異変があったんじゃないのか。まあ、そんなことを考えたところで僕には何もわからないから考えるのをやめた。


数日後。

僕は七瀬さんが入院している病院に来ていた。受付で七瀬さんの病室を聞いて、エレベーターに乗る。今日僕が七瀬に会いに来たのは、七瀬さんに休んでいた間のプリントや課題を渡しに来るためだ。本当はくるつもりなんてなかったけど、たまたま日直だったから先生に頼まれたのだ。だから決して七瀬が心配でお見舞いに来たわけではない。

病室の前まで来て帰りたくなったけど、そんな気持ちを打ち消して病室の扉を開ける。

扉を開けると七瀬さんはベットの机に向かってノートのようなものを書いていた。きっとまた死ぬまでにやりたい事ノートでも書いているんだろう。扉を開けても気づかないあたり相当集中しているんだろう。

声をかけると七瀬さんはびっくりしたようにびくっっと飛び跳ねていた。


「びっくりした。来るなら言ってよ。急に来られるとと心臓に悪いよ、早死にしちゃうよ。」

「それは困るな。今度からは連絡するようにするよ。それで何かいてるの?」

「これはね、日記だよ。死ぬまでにやりたい事のことだったり、なんもない日の一日にあったことを書いてるの。」

「そんなの書いてたんだね。」

「うん。それで今日はなんで来てくれたの?もしかして、私が心配でお見舞いに来てくれたの?」

「違うよ、僕はただ七瀬さんが休んでる間にもらったプリントを届けに来ただけ。はいこれ。」


僕はプリントの入ったファイルを鞄から出して七瀬さんに渡す。


「ありがとうー。なんか意外だね。咲人くんがこういうプリントを届けてくれるなんて。」

「僕が進んで来るわけないでしょ。今日がたまたま日直だっただけて、日直じゃなかったら来てないよ。」

「そこは嘘でも進んで来たって言うところだよ咲人くん。」


七瀬さんは拗ねたように少し頰を膨らませた。


「次からはそうするよ。後これもどうぞ。」


そう言って僕はファイルとは別に手に持っていた紙袋を渡した。


「え、何これ!中見ていい?」

「いいよ。」

「わあー、いちごだ!咲人くん私がいちご好きって知ってたの?」

「いや、ただ好きそうだなって思って。喜んでくれたなら良かったよ。」

「ありがとう!せっかくだし一緒に食べようよ。そこの棚からお皿取ってくれる?」


僕は七瀬さんに言われた通りにベットの隣りにある棚からお皿とフォークを取り出す。

それからは七瀬さんが休んでいる間の学校話しなど色々七瀬さんに聞かれた。


「やっぱり玲奈とは上手くいってないんだねー。」

「まあね。」


僕はあははと笑い流しながら答えた。


「玲奈と咲人くんには仲良くほしいんだけどなー。」

「それは多分無理かな。」

「きっと咲人くんならできるよ。」


その後も七瀬さんといちごをほおばりながら話していると、いつのまにか外も暗くなっていたので帰ることにした。


「今日はありがとね、楽しかったよ。」

「うん、また学校で。」


そう言って僕は病室を出た。

病室を出る時の七瀬さんは少し寂しそうに感じた。

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