第58話 装備の新調 前編


 雑貨屋で買った赤色の首輪をガチャに付け、残りは空間収納に押し込み、武具屋にきた。



 革のロングコートは衣服として認識されてるみたいだし、リアリーさんにもらった部分鎧も、破損してたやつの一部を着込んだので、装備認識されず防御値は上がっていないっぽい。



 探索者としての経験を積むためGランクをメインに探索していくつもりだったことと、プロテクションシールドが優秀だったので、鎧には目をつぶってきた。



 けど、調査依頼でDランクダンジョンとかが見つかったため、プロテクションシールドだけではもたない場合もあるんだよなぁ。



 ちゃんとした鎧準備しないとな。



 できれば、重くなくて動きやすいやつがいい。



「いらっしゃい。自由に見てってくれ。といっても駆け出し向けの安いやつしかないがな」



 武具屋は雑貨屋と違い、客の姿は1人もなかった。



 雑貨屋同様、品揃えはあまりよくないってわけか。



 店内を見回すと、革製の鎧や金属製の鎧、胸当てや小手、肩当などの防具や、弓、剣、大剣、斧、槌、短剣といった平凡そうな武器が並んでいる。



 まずは武器からだな。鋼の短剣よりかよさげなのないか見つけるか。



 目星をつけた武器に触れ、鑑定を発動する。



 ―――――――――――――――――――――――――――――――


 鉄の剣


 基礎攻撃力:30


 属性:なし


 特別効果:なし


 エンチャント:可能


 解説:刀身が80センチ程度の鉄製の剣


 ――――――――――――――――――――――――――――――――



 鋼鉄の短剣より、威力が下がるのか……。



 リーチは伸びるけど、威力が下がるのはちょっとなぁ。これはないわー。



 剣技向上Ⅰスキルの恩恵は受けたいから、短剣か剣に限定されるんだよなぁ。



 こっちの短剣はどうだろうか。



 ―――――――――――――――――――――――――――――――


 鉄の短剣


 基礎攻撃力:10


 属性:なし


 特別効果:なし


 エンチャント:可能


 解説:刀身が20センチ程度の鉄製の剣


 ――――――――――――――――――――――――――――――――



 だめかー。店主も駆け出し向けの商品しかないって言ってたものなぁ。



 オークションに出品されてるエンチャント装備品で、買えそうな武器を探せってことか。



「ヴェルデ様、これとかどうでしょうか? 奥の方に隠れたものですが」



 一緒に武器を探してくれていたアスターシアが、差し出してきたのは見覚えのある反りを持つ鞘入りの武器だった。



「そいつは扱いが難しいから、駆け出し連中はみんな敬遠していったやつだ。中身の手入れはしてるんだが、ずっと在庫でなぁ。正直困ってる。買ってくれるなら安くしとくぞ」



 困ってるみたいだけど、こんなマニアックな武器を初心者が上手く扱えるとは思えない。



 まぁ、片刃で反りも入って、拵え的にも太刀のやつだし、抜くのにコツがいるから、扱いは難しいだろうなぁ。



 アスターシアが差し出した武器は、いわゆる日本刀と言われる形をした刀だった。



 手で触れて鑑定をしてみる。



 ―――――――――――――――――――――――――――――――


 打刀(無銘)


 基礎攻撃力:50


 属性:なし


 特別効果:なし


 エンチャント:可能


 解説:刀身が80センチ程度の片刃で反りが入った曲刀


 ――――――――――――――――――――――――――――――――



 鋼鉄の短剣より強いな。



 使ってみたいとは思うが、果たして俺に扱える物なんだろうか?



 アスターシアから受けとった打刀を手にすると、鯉口を切って鞘から刀身を引き抜く。



 剣技向上スキルのおかげか、スムーズに鞘から刀身を引き抜けた。



 刀身は綺麗に清掃してあり、きちんと刃紋もあるし、欠けや曲がりもないし、錆もないから切れ味はよさそうだ。



 かっこいいなぁ……。こう、厨二心をそそられる逸品って感じだ。お手入れが大変そうだけどさ……。買っちゃおうかなぁ。



 それにしても、こいつも絶対に『渡り人』がもたらした技術で作った武器だよなぁ。



 異世界ウィンダミアにも似た物は存在してたかもしれないけど、日本刀としての完成度を高めたのはやっぱオタク系か職人系の『渡り人』がいたと思う。



「ヴェルデ様に似合っておられますよ。より一層、剣士様っぽくなります」



「そうかい?」



 アスターシアに褒められると、買いたい意欲が増すなぁ。



「具合をたしかめたいんで、差していいですか?」



「いいぜ。剣帯に差した状態で抜刀してみてくれよ。みんな、それが上手くできずに諦めたからな」



 打刀を刃を上にして剣帯に差し、ベルトを締める。



 本当なら帯に差すんだが、剣帯はこっちの世界の衣装に合わせて作られた感じか。



 鞘を持ち、鯉口を切ると、刀身を引き抜き、最後は鞘を引いた。



 剣帯のおかげで、鞘が革のロングコートの邪魔にもならないか。



「おっ! 抜けるか!」



「抜けましたね。いい具合ですよ」



 買いたい意欲が頂点を超えたので購入しよう。鋼鉄の短剣より威力も増すし。



 抜いた刀身を納刀していく。



「これ、買います!」



「いいぜ。本当なら600ゴルタなんだが、売れ残りだし手入れのセットも付けて300ゴルタにまけとく」



 これはお買い得だったかもしれない。鋼鉄の短剣は破損時の予備として、空間収納の中にしまっておこう。



 杖と刀の二本差ししても問題なしだしな。



「ありがとうございます! まけてもらうだけじゃ申し訳ないんで、他にも何か購入しますよ」



「おう、じゃんじゃん買ってくれ」



 鎧も買わなきゃ。アスターシアのも新調しないといけないし。



 鎧が飾ってある場所に移動すると、候補の鎧を鑑定した。





―――――――――――――――――――


長くなったので2話分割します。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る