第36話 ガチャの悪戯


「金色コイン! ガチャ、よくやったぞ! えらい!! えらいぞ!」



 アスターシアに抱かれているガチャの頭をわしゃわしゃと撫でてやる。



 褒められたガチャが嬉しそうにレバーを回して応えてくれた。



「え、えっと、これはそんなに大事な品なのですか?」



 事情が飲み込めていないアスターシアが、戸惑った顔を浮かべている。



 そう言えばステータスとか『渡り人』関連の話はしていたが、スキルガチャについては彼女に言ってなかった気がする。



「そいつは、俺が新しいスキルを授かるために使うコインだ」



「新しいスキルを得る?」



「実演した方が早いな。ガチャを下ろしてやってくれ」



「はい、ガチャ様、どうぞー」



 地面に下ろしてもらったガチャが、俺の前にくると行儀よくお座りをして待つ。



 ほんと、ガチャは俺に忠実だし、可愛いし、さらに頭がいいよな。はぁ~、好き!



 両手で抱き上げてわしゃわしゃしながら、謎のモフモフ感を味わいたい衝動を抑え、金色コインをコイン投入口に入れる。



「あ、あの! ガチャ様にそれを食べさせるのですか!? コインですよ? 金属の?」



 え? アスターシアには俺が、ガチャに金色コインを食わせてるように見えるの?



 もしかして俺、愛犬に金属のコイン食わせるヤバい飼い主に見えるのか!? 



「ち、違うんだって! これは、スキルを引くために必要なの! ガチャもアスターシアに何とか言ってくれ!」



 チラリと俺を見上げたガチャが、うんうんと頷くと、その場にパタリと倒れ込んで動かなくなる。



 え? なんで倒れた? ちょ、ちょっとガチャさん!?



 俺が金属製のコイン食わせて、それがもとで君が倒れちゃったように見えるんですけど!?



「ガチャ様ー! 吐き出してください! すぐに! ヴェルデ様、すぐに指を突っ込んで吐き出させないと!」」



 血相を変えたアスターシアが、倒れたガチャに駆け寄る。



 ピクリともしないガチャを彼女が抱え上げた時、レバーが勢いよく回った。



 てーってれー、ドッキリ大成功! って、言いたそうに俺とアスターシアの顔を見るんじゃありません!



「だ、大丈夫なん……ですか?」



 心配するアスターシアに向かい、ガチャは大丈夫なことをアピールしている。



 ふぅ、こっちも焦った……。でも、さすが、ガチャだ。



 なんという賢さ。はぁー、最高か!



「大丈夫、金色コインはガチャに有害なものじゃない。むしろ、必要なものでもあるかもしれない」



 元気よく地面に下りたガチャが、俺の説明を補足するようにうんうんと頷いて見せた。



「そうでしたか……。取り乱してしまい申し訳ありません」



「いや、大丈夫だ。説明が足りてなかったのも事実だしな。俺はガチャからスキルを授けてもらえるんだ。そのための対価がさっきの金色コインになる」



 俺の前に座ったガチャのレバーを回すと、カプセルが取り出し口に落ちる。



 それをアスターシアに見せた。



「このカプセル見えるか?」



「えっと……わたしには見えませんね。ヴェルデ様だけ見える物でしょうか?」



 隠蔽看破を持つアスターシアでもカプセルが見えないってことは、ガチャがガチャマシーンに見えるのもやっぱ俺だけなんだろうな。



 もしくは『渡り人』しか見えないかのどっちかか……。



「らしいな。とりあえず、金色コインがあれば俺のスキルが増えたり成長させられると覚えておいてくれ」



「しょ、承知しました。『渡り人』であるヴェルデ様しかできない成長の仕方と覚えておきます」



 この世界の人の成長システムは、どうなってるのかも気になるところだが、まずはスキルを確認しないと。



 ガチャとアスターシアに見守られつつ、カプセルを開け、スキルを確認する。



 ―――――――――――――――――――――


 ランク:N


 スキル名:知力増強Ⅰ


 種別:パッシブスキル


 効果:最大知力ステータス向上


 ステータス補正量:INT10%アップ


 取得しますか? Y/N


 ―――――――――――――――――――――――



 残念、被りだったな。



 俺はアスターシアにも見えるよう、ウィンドウ表示を切り替える。



「これがスキルの獲得画面。すでに取得してるやつなんだが、取得を選ぶと――」



 ―――――――――――――――――――――


 ランク:N


 スキル名:知力増強Ⅱ→Ⅲ


 種別:パッシブスキル


 効果:最大知力ステータス向上


 ステータス補正量:INT20%アップ→30%アップ


 ―――――――――――――――――――――――


 ――――――――――――――――――――――――


 ヴェルデ・アヴニール 人族 男性 


 HP144/144


 MP54/54


 STR:33 VIT:31 INT:13→14 AGI:8 DEX:18 LUK:13


 ジョブ:『戦士Ⅱ』《1》 魔術士Ⅰ《2》


 アクティブスキル:鑑定 解体 地図 ステータス隠蔽


 パッシブスキル:魔力増強Ⅱ 体力増強Ⅳ 生命力増強Ⅰ 剣技向上Ⅰ 空間収納Ⅰ 『知力増強Ⅱ→Ⅲ』 器用さ増強Ⅱ セカンドジョブⅠ 運増強Ⅰ 言語翻訳Ⅰ 筋力増強Ⅰ


 戦技スキル:ソードスラッシュⅠ 連撃Ⅰ 連続斬りⅠ キックⅠ


 魔法:ファイアⅢ アイスⅡ ヒーリングライトⅡ ウィンドⅡ プロテクションシールドⅡ ストーンブラストⅠ


 装備:鋼鉄の短剣40+20 シャーマンの20 守護の小手15 幻影の指輪 偽りの仮面


 基本攻撃値:93 基本防御値:46→56(物理シールド200) 基本魔法力:13→14(攻撃魔法のみ+10)


 SSR確定メーター:3/20 金色コイン残数:0


 ―――――――――――――――――――――――――



「って、感じにスキルが成長するのが、俺の持つスキルガチャの力」



「ヴェルデ様から聞かされていましたが、改めて目の前で見るとものすごい力ですね……。つまり、わたしたちウィンダミアの住民が持つ特性みたいな力が、いろいろと成長していくってわけですし」



 お! そうだ! ちょうどいい機会だから、こっちの世界の住民の成長システムについて聞いてみるか!



 戦闘後に光の玉がアスターシアにも吸収されてたわけだし。



 なにかしらの成長システムは存在してそうな気はする。

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