第37話 現地人の成長システム

「ちなみに、こっちでは成長とかってするのか?」



「成長ですか?」



「うん、俺のステータスとかスキルみたいなやつが増えるみたいな感じの」



「日常生活では、ほぼないと思います。普通の人が、LV上がったなんて話は聞いたことありませんしね」



 そう言えば、ウィンダミアの人のステータス欄には、俺と違ってLV表記あったんだよな。



 日常生活ではそれらのLVは上がらないのか……。



「主に自警団とかでダンジョンから溢れた魔物を討伐している人とか、探索者となってダンジョンで魔物を倒している人がLVが上がり、新たな特性を授かるという話はチラホラ聞いたことがあります。なので、隠蔽した時にヴェルデ様のLV表記が15だったので安心しました」



「リアリーさんが俺のLV表記に違和感を覚えなかったのは、修行中に魔物を狩ってたとアスターシアが言ってくれたおかげか」



「はい、そのように補則しておけば、LV15でも探索者ではないという違和感が消えますしね。それに、LV1のまま探索者登録してたら、いろいろと怪しまれて、もっと詳しく調べられた可能性もあります。LV1であのように大量の特性を持つ者は、いないですからね」



「なるほどな。ある程度成長や実績を残したら、LV表記は上げた方がよさそうだな」



「はい、ずっとLV15では不審がられると思いますので」



「おっけー。気を付けておく」



「それと、たぶんわたしはLVアップしたと思われます。ヴェルデ様の倒した魔物の光の玉がわたしにも吸収されていたので。特になにが変わったとかは感じませんが……」



 やっぱアスターシアにも経験値が入ってたんだな。



 ダンジョン内で倒した魔物は、仲間内で経験値が割り振られるんだろうか?



 そういうシステムだと、俺が戦闘しまくって魔物を倒せば、アスターシアも勝手に成長してくれて楽なのだが。



 とりあえず、鑑定してみるか。



「確認してみる。手を貸してくれ」



 アスターシアの手に触れ、鑑定を発動させる。ウィンドウは、彼女にも見えるようにしておいた。


 ――――――――――――――――――――――――


 アスターシア 人族 女性 LV2


 特性:隠蔽看破


 戦技スキル:なし


 魔法:なし


 装備:メイド服 レザーベスト ラウンドシールド ライトメイス 影潜りの外套


 賞罰:なし


 ―――――――――――――――――――――――――



 確かにレベルが2になっている。



 けど、それ以外は装備が変わってるだけで成長した感じは分からないな。



 一定までLVが上がると、特性が増えたりとかするのか?



 ステータス数値もないし、強さが掴みにくい仕様だ。



「LVは上がっておりましたね」



「ああ、でも強くなったかは分かりにくいな。戦闘は俺がやればいいし、これからもガチャの世話係と見えない罠や宝箱の確認を頼む」



「承知しました」



 アスターシアに戦わせる気はないけど、流れ弾とかは行く可能性はある。



 多少は自分の身を守れるように成長してくれるといいな。



「ガチャ、どうしたんだ?」



 俺とアスターシアが話している間、足元にいたガチャが、背中に背負った小さなバッグを見せてくる。



「あー、おやつの時間か! そうだな。宝箱が消えるまで脱出用の転移ゲート出ないだろうし、休憩にするか」



「では、すぐに湯を沸かしてお茶とお菓子を用意いたします。ガチャ様、いま少しお待ちくださいね」



 アスターシアはガチャの背負っている小さなバッグから、リアリーさんが作ってくれたおやつを取り出す。



「ほい、これコンロと食器。ガチャはこっちこい」



 俺は空間収納から取り出した道具とお菓子をアスターシアに渡し、おやつを待つガチャを抱えて地面に腰を下ろす。



 膝の上にいるガチャは、自分用のおやつであるペーストされたお肉が盛られていくのをジッと見てながら、レバーをゆっくりと動かしている。



 まぁ、ガチャのよだれが、俺のズボンを濡らしていくわけだが。



 朝飯もガッツリ食ってたはずなんだけど、成長期なんだろう。



 ぷにぷににならんように、運動もさせないとな。



 やがて湯が沸き、アスターシアが紅茶とお菓子を差し出してくる。



 もちろん、ガチャのおやつも専用の皿に盛ってあった。



「お待たせしました」



「よし、ガチャ、食べていいぞ! アスターシアも休憩してくれ」



「はい、承知しております」



 膝の上から勢いよく飛び出したガチャは、皿に顔を埋めておやつを貪る。



 そんなガチャを眺めつつ、俺とアスターシアは、脱出用の転移ゲートが開くまで、まったりとしたティータイムを楽しむことにした。

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