第30話 犯罪者チェック


「探索者登録ありがとうございます! まずは―――って、リアリー様、何からでしたっけ?」



「登録前にこちらでステータスのチェックをさせてもらい、犯罪歴の有無を確認。犯罪歴ありの場合はお引き取り、なしなら本登録に進む」



「あ! そうでした! 研修が終わってからずっとギルド職員の仕事してなかったんで忘れてました!」



 だ、大丈夫かな? ちゃんと登録してもらえるんだろうか……。



 それにギルド職員の仕事をしたことがないって――どういうこと?



 わたわたと登録の準備を進めるウェンリーに一抹の不安を感じつつも、準備が整うのを待つ。



「お、お待たせしました! まずは、犯罪歴の確認をさせてもらいますね。こちらに手のひらを当ててください」



 黒くて四角い板みたいだけど、なんか淡い光も発してるし、大きさもスマホみたいだな。



 手をひらを当てろと言うことだけど、これでいいのか?



 スマホみたいな黒い板に触れると、淡い光が緑色の変化する。



「はい、ありがとうございます。犯罪歴なしですね。そちらの方もよろしくお願いします」



「承知しました。これでよろしいでしょうか?」



 問題なく俺と同じ緑色になったな。



 基本的にどういう状況になると犯罪者扱いになるんだろうか?



「1つ質問がありますが、犯罪者と認定される場合はどういった状況でしょうか? 我が主は幼少期から山奥で修行を重ねており世間に疎い御方ですので、ギルド職員の方からご説明をして頂けると助かります。わたしも説明を致しましたが認識が違っている可能性もありますし」



 アスターシア、ナイス、質問!



 犯罪を犯すつもりはないが、知らないうちに犯罪者になったら困るので、聞いておきたかったところだ。



 質問してくれたアスターシアに視線を送り、感謝の意志を伝えると、彼女はニコリとほほ笑む。



「ひゃ、ひゃい! 犯罪歴のことですね。えーっと、えーっと」



 質問されたウェンリーが、困った顔でリアリーさんを見た。



 きっと研修は受けたのだが、覚えていないのだろう。



 リアリーさんが、苦笑いをして代わりに説明を始める。



「この世界の住民に関して犯罪歴を付与できる機関は3つ。統一ダンジョン協会、探索者ギルド、国家の治安部門。統一ダンジョン協会は全ての住民に対し、犯罪歴を付与。探索者ギルドは探索者登録した者のみ。国家の治安部門はその国の住民のみとなっているわ」



 ふむ、統一ダンジョン協会と探索者ギルドの権限は、国家を超えのか。



 統一ダンジョン協会と探索者ギルドは、相当強い権限をもった機関ってことだ。



「犯罪歴が付くのは、各機関が犯罪事案を把握して懸賞金をかけた場合ね。さきほどヴェルデ君が触った犯罪者照合機に登録されている場合は赤く光るわ。犯罪として処罰される行為は、窃盗、殺人、放火、探索者同士の諍いごと、各国家が定める違法行為、『渡り人』である場合、特性を使った犯罪行為とかかしらね」



『渡り人』であると、速攻で犯罪者扱いかよ……。



 俺はステータス改ざんの力で別人になってるから、チェックをすり抜けられたってことか。



 マジで俺が『渡り人』だってバレて、犯罪者として登録されたら生きていけなくなるな。



 ヴェルデ・アヴニールとして、ひっそりと真面目に探索者生活に勤しまないと。



「あと国によっては街の出入りだけで確認される場合もあるからね。このクルリ魔導王国は探索者や旅商人を優遇するから確認してないけど」



 なるほど、出入りの管理は国よって違うのか。



 他の国に移動することもあるだろうし、気を付けておかないとな。



「リアリーさん、分かりやすい説明ありがとう」



「こちらこそ、ウェンリーの手際が悪くて申し訳ないわね。ほら、ウェンリー本登録まで進めて」



「は、はい! で、ではこちらに手を」



 ウェンリーが先ほどよりも大きな黒い板を、新たにこちらへ差し出した。



 大きさ的にタブレットくらいだが、犯罪者照合機と同じく淡い光をまとっているようだ。



「今から本登録前のステータスのチェックを行います。これはヴェルデ様が、どのような特性を持っているのかを確認し、探索者名簿に登録するための確認となっております」



「あのステータスによっては、登録できない場合ってあるのかい?」



 俺が質問すると、ウェンリーの視線が左右に泳ぐ。



 これは、また忘れてるパターンか。



 隣のリアリーさんをチラ見したウェンリーだったが、ハッとした顔をすると口を開く。

 


「ええっと、ありません。どんな特性や能力でも犯罪歴がない方は探索者として登録ができるようになっております。はい、そうなってます!」



 どうやら自分で思い出せたようだ。



 本人も頑張っているんで、仕事の不手際を責めるつもりは起きてこない。



「返答ありがとう。俺が登録できるか不安だったからね。探索者になれないと食い扶持がないわけだし」



「ひゃ、ひゃい! お役に立てて光栄です! で、では黒い板に触れてもらえますか!」



「ああ、これでいいかな?」



 黒い板に触れると、目の前に見慣れたステータスウィンドウが浮かんだ。



 ――――――――――――――――――――――――


 ヴェルデ・アヴニール 人族 男性 LV15


 特性:魔法使い 剣術使い


 戦技スキル:ソードスラッシュ 連撃 連続斬り キック


 魔法:ファイア アイス ヒーリングライト ウィンド プロテクションシールド ストーンブラスト


 装備:鋼鉄の短剣 幻影の指輪


 賞罰:なし


 ―――――――――――――――――――――――――



 ステータスウィンドウを目にしたウェンリーが、目丸くして固まった。


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