第20話 逃走
ガチャに壮年の男の警戒を警戒を任せると、俺は先ほど倒した2人から装備を全てはぎ取り下着姿にする。
声さえ出せるようにしておけば、気絶から覚めたデキムスが助けるだろうしな。
あと、俺たちを簡単に追いかけられないよう、装備と荷物は全部頂いていくとしよう。
はぎ取った装備を壮年の男が背負っていたバッグの中に詰め込み、そのまま空間収納にしまえるのか試すため放り込んでみた。
バッグごと入るのかよっ!
50種類と限られてるから、バッグとかの入れ物にまとめてから収納した方が効率的だ!
って、効率的な使い方の発見を喜んでる暇はないな! デキムスが戻ってくる前にずらからないと。
バッグをしまいこんだインベントリ欄を閉じると、警戒してくれているガチャに声をかけた。
「ガチャ、移動するぞ! 走ってついてこれるか?」
ガチャは勢いよくレバーを回して応える。
「おっけー、じゃあ、俺はこいつ担いでいくから」
大柄な壮年の男を肩に担ぎ、その上から影潜りの外套を羽織ると、その場から急いで離れることにした。
日が暮れ始めた森の中を壮年の男を担いで、ガチャとともに駆ける。
これ以上は、暗くて足もとがおぼつかないし、隠れて夜を過ごせそうな場所は……。
巨木の洞があるな。あそこに潜んで夜を過ごそう。
樹齢何百年もすぎた巨木の洞は、2人が入っても十分な広さを有している。
担いできた壮年の男を地面に寝かせると、自分も隣に腰を下ろした。
後をついてきていたガチャも走り疲れたのか、俺の膝に乗って休憩を始める。
「ふぅ、デキムスのやつらを撒けたと思いたいが」
壮年の男は傷を魔法で回復させた代償なのか、睡眠がもともと不足していたのか分からないが、スヤスヤと寝息を立てて眠っているままだ。
「我ながら、お人よしだと思うぞ。なぁ、ガチャ」
助けた壮年の男の寝顔を見つつ、膝の上に乗ったガチャの頭を撫でた。
ガチャは頭を振って、ゆっくりとレバーを回し、こちらを褒めてくれているようだ。
正しい選択をしたかは分からないが、彼を見捨てて独りで逃げて後味の悪い罪悪感にさいなまれる結果は回避できたと思いたい。
腫れはだいぶ引いたけど、もう一回ヒーリングライトしとくか。
寝息を立てている男に触れ、ヒーリングライトの魔法を発動させる。
打撲や青あざ、擦過傷、切り傷は完全に消えたみたいだ。
でも、骨折とか内臓損傷とかしてたら、ヒーリングライトじゃ治せないんだよなぁ。
そうだ! 連中から分捕ってきたバッグの中に、ポーションとか入ってねえかな。
空間収納していたバッグを取り出すと、ゴソゴソと中身を漁る。
あった! ポーションっぽいガラス瓶が10個くらいあるな。全部鑑定してみるか。
鑑定の結果は4種類のポーションだった。
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リカバーポーション
HP回復量:100(6時間)
回復効果:骨折、内臓損傷、火傷、凍傷を6時間かけて回復させる。欠損は回復しない。
解説:紫の液体が満たされたガラス瓶。重傷と判定される傷の治療に使用される。
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ヒーリングポーション
HP回復量:30(即時)
回復効果:打撲、軽度の切り傷、軽度の噛み傷、軽度の擦過傷が徐々に回復する
解説:赤い液体が満たされたガラス瓶。軽傷と判定される傷の治療に使用される。
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マナポーション
MP回復量:30(即時)
回復効果:MP30が即時回復する。
解説:青い液体が満たされたガラス瓶。魔力の回復に使用される。
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キュアポーション
回復効果:病原菌由来の疾病の治癒を6時間かけて行う。魔法由来の疾病治癒は不可。
解説:黄色の液体が満たされたガラス瓶。病気回復に使用される。
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リカバーポーション×2、ヒーリングポーション×2、マナポーション×4、キュアポーション×2の10個か。
いちおうリカバーポーション飲ませておけば、骨折とか内臓損傷は治癒されるっぽいな。
それと、あいつらはこいつが病に侵されてるから、格安で買った奴隷だって言ってたはず。
となると、キュアポーションも飲ませておいた方がいいかもしれないな。
「んんっ……。こ、ここは?」
ポーションの鑑定を終えたところで、壮年の男が目を覚ました。
「飲んどけ。詫びポーションだ。一瞬だけ、お前を助けるか迷った」
俺は鑑定を終えたリカバーポーションとキュアポーションを男に投げ渡す。
「そんなの気にしないでも……。あんな状況ならわたしだって見捨てたと思いますよ。でも、こうしてわたしを助けてくれたわけですし、回復魔法までかけてくれてますから、お礼を言うのはこちらですって」
男は居住まいを正すと、俺に深く頭を下げる。
「頭を上げろって。そんなことなんてしなくてもいいから、まず渡したポーション飲んどけ」
頭を上げさせると、渡したポーションを飲むように促す。
「こ、これ! リカバーポーションとキュアポーションですよ! こんな高価なポーションなんて飲めませんって」
投げ渡されたポーションを確認した男は、驚いた顔をして固まった。
「高価なのか? でもまぁ、俺のポーションじゃないから問題ない。詫びの品であるとともに、夜が明けたら、もっと遠くに逃げるからお前が骨折とか内臓損傷してたり、病気とかで走れないと俺が困る。だから、飲んどけ」
「あ……そういう理由も……。承知しました。そうであれば遠慮なく頂きます」
男は俺の目の前でポーションの蓋を外すと、中身を飲み干していく。
奴隷主のもとを逃げ出した形となったこいつも、デキムスたちに見つかれば、命はないって分ってるんだろう。
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