第12話 ボスモンスター

「何かいるのか?」



 松明の明かりで奥を照らすと、大きな空間が広がっていた。



「広いな……明かりが奥まで照らし出せない」



 やたらと広い空間だが、なんのためにあるんだろうか?



 松明の明かりを頼りに、広い空間の中に入っていく。



 神殿……? 建物の残骸っぽい物が、中央にあるな。



 視線を凝らして、中央の建物の残骸を見ていたら地面が揺れた。



 振動と同時に建物の残骸に残されていた明かりが灯っていく。



 照らし出された明かりに浮かび上がったのは、俺の身体の数倍はデカい人型の生物がいた。



 どう見ても普通の人じゃないよな! 嫌な予感がするっ!



『ガチャ、こっちこい』



 俺はガチャを抱えると、松明を消して姿と気配を隠せる影潜りの外套を頭から被る。



 あの姿形、ゴブリンだよな……。



 でも異常に身体がデカいし、巨大な剣までもってやがる。



 周囲を警戒してるっぽいけど、こっちには気づいてないらしい。



 今のうちに入ってきたところから出て――。



 しまってる!?  侵入してきた入り口がきれいさっぱりと消え去ってる!? マジか閉じ込められた!



「ニンゲン、居るのは分かっている! 出てこい!」



 巨大なゴブリンは、手にした剣を地面にたたきつけ、こちらの姿を探している。



 こっちの存在が分かってるってマジかよっ! かなり強そうに見えるんだが!?



「この部屋にシンニュウしたことは分かっている! 生きて外に出たかったら、オレを倒せ! さもなくば死だ!」



 喚き散らす巨大なゴブリンが、剣を振り回し、発生した衝撃波が周囲の建物の残骸を破壊する。



 どうやら罠みたいな物が設置されてて、あいつを倒さない限り、ここに閉じ込められ続け、外に出れないって感じだ。



 罠が設置されてたってことは、俺がいたのは、自然にできた洞窟じゃなかったってことだよな。



 宝箱とか松明とか整備されてたから、もしかしてって思ってたけどさ。



 これって、ダンジョンってやつか?



 ってなると、あいつがボスって可能性もあるんだよな。



 俺が侵入したことは分かっているようだが、影潜りの外套の効果でこちらの居場所は掴めてないから、奇襲からの連続攻撃でやれそうな気もする。



 あの剣に当たったら、まともな防具のない俺は倒されちまうんだろうけど。



 でもアレを倒さなきゃ、どうにもならんわけだし、やるしかねぇ。



『ガチャ、お前は危ないからここで隠れてろ』



 巨大なゴブリンの視界に入らないがれきの裏へ、ガチャに隠れるように言う。



 抱きかかえていたガチャは、身体全体を使って拒否を示した。



 お前……俺と一緒に戦うつもりか……。



 こっちの意識を読んだように、俺を見上げたガチャは『一緒に戦う』と言いたげにレバーを回す。



 俺を心配してくれてるってわけか。だったら、なおさら隠れてもらわないとな。



『大丈夫だって、死んだりはしねぇし。それに、これは俺の見てる楽しい夢だから勝つって決まってる』



 頭を優しく撫でてやっても、ガチャは身体全身を使って拒否を示したままだ。



『俺にとっちゃあ、自分が怪我するより、お前があいつに怪我させられる方が耐えられないってことだ。だから、隠れててほしい。賢いガチャなら分るよな?』



 なおも、ガチャは拒否したそうにするが、俺の説得を受け入れ、地面に下りるとがれきの裏に隠れた。



 大丈夫だ、ガチャ。お前を残して絶対に死なねえよ。



 脱出するために、ちょっくらあのゴブリン狩ってくる。



 それにあいつ強そうだから、倒したらいっぱいガチャコインもらえそうだしな。



 ゲットした金色コインで、一緒にガチャ引こうぜ。



 もう一度だけ、ガチャの頭をわしゃわしゃ撫でると、影潜りの外套を深くかぶり直し、短剣を鞘から抜いた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る