第10話 初めてのお食事タイム



 腹減ったなぁ……。食い物なんてないよな……。



 夢の癖に腹が空くなんてリアルすぎだろ。



 空腹に耐えかね周囲を見渡すと、先ほど倒したロングネイルベアーの死骸が目に入った。



 マズかろうが、飢え死にするよりかはマシだ。



 短剣も手に入ったし、肉にして焼いて食ったら空腹も紛れるかも。



 それに解体スキルが使えるか、試しておきたい。



 鋼鉄製の短剣を鞘から抜くと、スキルを発動させてロングネイルベアーの解体を始めた。



 解体スキルスゲー! 自動で身体が動いて解体していくんだが!?



 素材化できる部位を綺麗に切り分けてくれてるぞ。



 数分後、ロングネイルベアーは『熊の皮』、『熊の肉』、『長い爪』、『骨』になった。



 ついでに、はぐれウルフの方もやっておくか。



 インベントリから、はぐれウルフの死骸を出すと、同じように解体スキルを発動させる。



 解体されたはぐれウルフは、『狼の皮』、『狼の牙』、『狼の肉』、『骨』になった。



 狼の肉はなんか塊りが小さいから、熊の肉を焼くとするか。



 破損した宝箱を叩き割り、木材を細かくして松明の火をつけ、即席の焚火を作る。



 そこへ尖らせた木の串に刺した熊の肉を炙ることにした。



 鍋物とか煮物とかの方が旨いって聞いたことあるけど、焼いておけば、何とか食えるだろ。



 あとは残った素材は収納しとかないとな。



 素材化された品を次々に収納していく。



 収納を終えると、インベントリは7個埋まった。



 骨は集約されて同じマスを使っているみたいだ。



 同じ種類の素材は集約される仕様で、50種類まで空間収納に詰め込めることが判明した。



 空間収納は成長するやつっぽいし、『Ⅰ』が『Ⅱ』になった時、収納できる種類が増える感じだろうか。



 確認を終えた俺は、いい匂いを出し始めた熊の肉に視線を向けた。



「おーい、ガチャ。起きたのか? 焚火の近くにいると危ないぞ。こっちおいで」



 俺の言葉も聞こえてないようで、ガチャの視線は焚火の上で焼かれている熊の肉に釘付けだった。



 ガチャの足元にはよだれでできたと思われる水滴の跡がちらほら見える。



「まさか!? お前、肉も食えるのか!?」



 ようやく俺の声に気付いたガチャがこちらに振り向くと、『食べれます』と言いたげにレバーをグルグルと回す。



 ええっ!? マジか!? わんこっぽいとは思ってるけど、肉食うのか!



 金色コインが餌だと思ってたんだが違うのか……。



「そっか、じゃあ、一緒に食うか?」



 勢いよくレバーを回したガチャが、俺の膝の上に乗って、こちらを見上げ肉をおねだりしてきた。



 くっ! あざとカワイイ! 可愛すぎるぞ! ガチャ!



 わしゃわしゃと撫でまわしたい衝動を抑え、焼き上がった熊の肉を刺した木串をガチャの前に差し出すと、肉が急に存在を消した。



 口がないから、どうやって食べてるか、分からねぇ! けど、食べられてる!?



「う、美味いか? ガチャ」



 何らかの方法で肉を食べたガチャが、レバーを回して喜んでいる。



 美味そうでなによりだ。俺も一つもらうとするか。



 新たに焼き上がった肉を取ると、自らの口に運ぶ。



 うん、悪くない味だ。脂が多めだけど、脂の甘さと肉の味がしっかり出てるな。



 強いて言えば、鍋で煮てくってみたい。



 野菜と一緒に煮るともっと美味く食べられる気もするぞ。



 肉食系の動物の肉は臭いって誰かが言ってたけど、この熊の肉はかなり美味いと思う。



 魔物だからなのか? それともダンジョンの影響だろうか?



 まぁ、美味しいからいいけどさ。



 もう一本食べるため、木串を手に取ると、ガチャが欲しそうな様子を見せた。



「まだ食うか? いいぞ、まだあるし」



 ガチャの前に新しい肉を差し出してやると、さっきと同じく肉の存在が消える。



「いい食いっぷりだ」



 俺はガチャの頭を優しく撫でてやった。

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