第38話 2−7

「それじゃこれから修行に取り組んでもらうわけだけど、色々と準備はいい?」

「はい。大丈夫です」

 それっぽい話をふられるものの、ここはあの書斎でもなければ応接のテーブルでもない。もっと屋敷の奥にあるダイニングのような場所でお茶の間という感じではない。あっても驚かないし、多分ありそうな気がする。

 今は朝食の時間で俺と比沙子さんは朝ご飯を食べていた。ご飯食でもパン食でもいいと聞いたので今日はご飯をお願いしていた。

 温かいご飯とお味噌汁に目玉焼きが主なメニューだった。やはり初日はしっかり食べておきたいと思ったのだ。

「山籠りとか軟禁とかそういう物騒なものじゃないから、楽にいきましょう。それなりに厳しいとは思うけどね」

「そう言ってもらえると少しは気が楽ですね。降霊術なんて生まれて初めてですからね」

「それじゃ十時くらいから始めましょう。最初はやっぱり概論からかな」

 比沙子さんが時計を見るでもなくお茶を飲んでいた。




 場所は陽当たりの良いテラスだった。

 ちなみに屋内である。

 俺が来た時には比沙子さんは既にホワイトボードを用意して待っていた。

「それじゃ朝に話した通り、概論から話していくわね。だからやること的にいうと座学になるわ。いきなりやって見せてもそれはそれでいい気もするけど、別に手品をするわけでもないからね。ちゃんと理屈を分かってからの方が理解も早いと思うわ」

「わかりました」


 それから比沙子さんの話が始まる。


「降霊術は読んで字の如く、霊を降ろす術のことよ。でも細かく分けるとね幾つかの体系があるの。まずは物に降ろすか、人に降ろすか。自分に降ろすか、他の人に降ろすか。神様を降ろすか、土着する精霊などを降ろすか、人の霊を降ろすか」


 比沙子さんはホワイトボードに樹形図のように区分して書いた。


「イタコって聞いたことはある? あれは『人の霊』を『自分に降す』という術なわけね。他の人に降ろすよりは難易度が低いし、物に降ろしても話はできないしょう」


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